虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ラグナロク その10
「なんだ、結局戦うのか」
「図に乗るなよ。我らが、ただ『超越者』に屈するとでも思っていたのか」
「……なんか、他の奴らがやらかしたみたいだな。まあ、俺には関係ないからどうでもいいけど。大切なのはただ一つ、最後に勝つのは俺だってことだけ」
「この状況でもなお、そのような戯言を語るか……いいだろう。ならばこの力、そのすべてを振るおうではないか」
鹿の角で創られた剣は、概念を切り裂くことすらできる星剣と打ち合えている。
どうやら神の力である神気を籠めて、その強度を高めているようだ。
「あっちの剣を封じておけば、勝てるって思い込んでたわけだ。まあ、二本より一本の方が楽だな」
実際には、二本よりも一本の方が一撃一撃の重さや正確さが優れている。
しかし俺の場合、いずれにせよ攻撃を受ければ死ぬからな……あまり大差がないのだ。
全自動で攻撃を仕掛けていた『勝利の剣』は現在、プログレスで生み出した半透明な手で封じ込めている。
だからこそ、それ任せの相手なら勝てると考えていたんだが……ダメだったな。
まあ、勝利の剣を無くした後は、ずっと鹿の角で戦い続けたって伝承もあったっけ?
「更新、再起動──『バトルラーニング』」
現在なお集め続けていた情報を、改めて戦闘学習の『プログレス』に書き込む。
搭乗中の[アライバー]に合わせた最適な動きで、フレイとの剣戟を行う。
「いやー、なかなか強いな。けど、このままなら押し勝てそうだ」
「くっ……なぜ来ない」
「二刀流の方が好きか? 本来なら、できないはずだろうに。まあ、二週目以降のラグナロクなら、いちおう可能なのか。強い剣を二本で強いって、子供の足し算かよ」
「魔力で構成された巨人の手。それを壊せば戻ってくるか……っ!?」
目に魔力を籠めて知覚してしまったようなので、行動を変えた。
じわじわと攻めていたところを急に苛烈な動きにして、そのまま猛攻を仕掛けてくる。
さすがに手そのものをやられてしまうと、俺も拙い展開になってしまう。
なので魔力を注ぎ込み、そちらが暴れている今でも抑え込んでいる。
「あんまり強いのは、情報負荷になるから嫌なんだがな──“オーバードライブ”」
さらに加速。
命を燃やすその能力によって、能力値すべてが十倍に強化される。
俺の能力値は器用さを除いて、すべてが1以下なのであまり意味は無いが……十倍の副次効果はそれ以外の部分にも影響を及ぼし、その結果として体感速度が速まった。
神経の伝達速度や魔力の移動速度など、いろんなものが速くなる。
結界を動かす速度がより速まり、剣戟もより勢いを増す。
──そして、剣はやがて本来の位置へ。
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