虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ラグナロク その08



 二振りの星剣の真価を解放し、神々へ挑む最弱の人族。
 搭乗するのは[アライバー]、生きることに特化した機体。

 そして、『SEBAS』と『プログレス』による高度な戦闘学習。
 加えてメカドラを纏ったことによって、それらを可能とするエネルギーを確保した。

 生き残ることに特化してた俺ならではの、無限成長による勝利を目指す。

「というわけで、いざ参らん」

 イメージと共に体を動かすと、それをなぞるように機体が動き始める。
 すぐに速度を上げていき、目的地へ瞬時に辿り着き──その刃を振るった。 

「ぐっ!」「ぎゃぁ!」「なんだ!?」

「まず三人……というか、三柱? まあ、とにかく退場だ」

「貴様、いったい何をした!」

「うん? なんか少しはマシそうな奴が出てきたな……というか、眩しいな」

 俺に向けて叫んでいたのは、尋常ではない輝きを放つ剣を向ける男の神族。
 細身の剣なのだが、主神の槍並みに警鐘が激しく鳴り響くヤバさを有していた。

「我が名はフレイ。アルフヘイムを統べし、妖精たちの王。貴様、名を問おう」

「俺はツクル。ただの『生者』だ」

「……貴様があの。その異形を纏う姿、やはり『超越者』という存在は狂っている」

「俺を観てそう思うのは、別にいいぞ。なんとなく自分でも、やっていることがおかしいことは分かっている。あくまでこれは、生き残るためだ……だが、それは俺だけのことを言っているわけじゃないんだろう?」

 まるで、他の『超越者』と合わせて見下すような発言に思えた。
 そしてそれを肯定するように、妖精の王は蔑んだ視線を向けてくる。

「かつて、このラグナロクにおいて、主神様と同士討ちという結果を生んだ者が居た。それは戦乙女の身でありながら、主神殺しと言う大罪を犯した──異物だ」

「……通称は?」

「──『天死』。地上にて穢れ、天魔に堕ちた彼の者と同じ『超越者』。なるほど、この世界に生者を……いや、『生者』を潜り込ませて何を考えているのか」

「……ははっ、そうか。そういうことかよ。やっぱり、あの人は凄いんだな」

 先ほど見た主神の姿に、勝つことはできずとも……と考えていた。
 しかしそうだったのか……嫌われ者と言っていたが、そういう理由があったのか。

「そういえばあの槍も、だいぶ格が高そうな槍だったな」

「主神殺しの大罪により、彼の者の槍は偉大なる神槍の力を継いだ。それを面白がった主神様が、外へ逃がすことがなければ……」

「まあ、お前じゃできないだろ。どうせ挑んでも負けるわけだし」

「……なんだと?」

 売り言葉に買い言葉、それらが最後に生む結論は一つ。

「生き急ぐか人族が。いいだろう、この剣の糧としてやろう」

「この世に絶対的な勝利なんてない。それを今、証明してやるよ」

 そんなこんなで、彼の神フレイが使うその神剣──勝利の剣に挑むことになるのだ。


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