虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ラグナロク その07



 現在の俺は[アライバー]という、巨大な機体に乗り込んでいる。
 要するに人体の限界を超えた動きを、機械で引き出すことが可能なのだ。

 まあ、普段から結界で体をぶっ壊す動きをしている奴には意味なんてないんだけど。
 それとの違いは速度や射程など、人体では拡張できない部分を高められることだ。

「始めようか──“オートカウンター”」

 戦闘学習の“バトルラーニング”に、自動反撃の“オートカウンター”。
 どちらも同じ『プログレス』を基に生みだされた能力……素晴らしいな、他者の力は。

「来い、メカドラ」

『ギャウ!』

「コマンド指定──『着装』」

『ギャォオオオ!』

 拳銃として呼びだしたメカドラに、すぐさま指示を加える。
 それを受けると、物理法則を超えて即座に巨大化──[アライバー]に纏わりつく。

 もともと大きさに関する問題は、神代の超技術で解消されている。
 厳密には、次元属性と言う概念が関わっているらしいが……まあ、今はいいや。

「名付けて『機鎧[龍星]』。メカドラ、少し無茶をするが体は気にしなくていい。全力で壊せ、俺の望む動きをしろ」

『ギャウ!』

「じゃあ、やりますか──『偽・武神』」

 その手に握り締めた星剣[虚膨]。
 魔力を籠めることで自在に拡縮可能なその剣へ、メカドラがエネルギー供給を行う。

 機械とはいえ龍を模した存在。
 人族がただ力を注ぐよりも、その量や質が優越しており、さまざまなカスタマイズができるようになった。

「サイズ固定、硬度強化、柔性付与、精製魔力纏化──星剣解放っと」

 ショウや『騎士王』に渡した星の武具たちには、それぞれ潜在能力が仕込んである。
 主人公や強キャラが使うような、武器がさらにバージョンアップするアレだ。

 魔物たちが『開核』を奥の手として持つように、他の存在も何らかの手段を講じる。
 人族は限界突破、『超越者』は権能……そして、武具は解放。

「[虚膨]の解放は概念への干渉。膨らませ続けた虚栄心は、やがて本物にすら届き得る刃となる──『虚心膨虐』」

 そんな刃が二振り、[アライバー]には装備されている。
 魔力に関する問題は、自動で魔力を生成してくれるメカドラが居るので問題ない。

「『偽・武神』はこれまでと違って、ありとあらゆる戦闘データ全部を反映した動きになる。その分、処理にも動きにも悪影響が出やすいから……でも、その分使えるって信じているからな」

 これまでの集大成、みたいな感じだな。
 武神を倒せれば、きっと『偽・』の部分も外れるだろう。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品