虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ラグナロク その05
俺が[アライバー]に乗って無双していると、それに挑んでくる者たちが。
……英霊たちもうずうずしていたが、さすがに状況が状況なので諦めていた。
死者と戦乙女で構成されるヴァルハラチームにおいて、唯一の生者である俺。
なので生者を憎む亡者、魔物などが襲い掛かってくる。
そしてそれだけではなく、英霊たち同様に武に対する意欲から俺に挑もうとする者たちも居た……神族、北欧神話で語られる強者たちが仕掛けてきたのだ。
「まあ、乗っている機体が他でもない。この単独生存特化型魔道操機[アライバー]で無ければ、やられていたかもな」
世界蛇ことヨルムンガンドを討伐した姿を見られ、狙われ始めていた。
自在に大きさを変えられる[虚膨]もネタが割れてしまい、不意打ちには使えない。
それでも[アライバー]にはもともと搭載していた機構が、いくつも存在している。
それらを巧みに使い分け、俺は今もなお生存していた。
「……それもこれも、主神格の奴らが潰し合いをしてくれているからか。さすがにこちらに手を伸ばされると、ちょいと不味かったかもしれないし」
特に厄介なのは、遠くで無双をしている老人の姿をした片目の槍使い。
まるで未来を見ているかのような動きで、他の神族や巨人を相手に戦っている。
彼こそが北欧神話における主神であるオーディン。
相槍であるグングニルを振るい、その道を阻むすべてを薙ぎ払っていた。
「他にも注意すべき奴はいっぱいいるけど。この舞台において、もっとも弱い奴が誰かと訊かれたら──それは『生者』である俺だ」
勝つことはほぼ不可能だろう。
しかし、それでも抗う手段はある。
勝つことと生き残ることは同義ではない、そしてそれに特化した存在こそ『生者』だ。
「『プログレス:バトルラーニング』をインストール」
《了解しました──インストール成功。起動し、能力を行使します》
俺は普段の戦闘時に、『SEBAS』が解析した他者の戦闘データを転用している。
結界に組み込むことで、最適な動きを強引に行っているのだ。
そして、『バトルラーニング』は誰かが目覚めさせたその『プログレス』版。
見取り稽古のように、自身で認識した動きの再現がやりやすくなるというもの。
「『SEBAS』、共有は可能か?」
《問題ありません。『バトルラーニング』と接続、情報の共有及び条件修正を実行──成功しました。旦那様だけでなく、私の得た情報も学習対象に含まれます》
「最高だ……神の力、頂こうじゃないか」
他にも武神は幾人も存在する。
それらすべてを学習の対象に収めれば、さらに強くなれるだろう。
……それができるのも、アインヒルドが生きている間だけ。
まだ大丈夫そうだし、没頭しようか。
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