虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ラグナロク その02
あれから、神託が降りた。
俺のヴァルハラチーム参加を認めるというもので、その際の条件などが伝えられる。
「──俺ではなく、アインヒルドの死が敗北の条件なのか」
「その名で……今はいいです。貴方の権能はある意味、不死性を持たない神族にとっても警戒すべき存在。このように、制限を課してもおかしくはないでしょう」
「あー、そういえばそうだったな」
北欧神話の神に不死性を有する神は、一柱として存在しない。
不老性の方は、とある林檎を食べることで獲得しているが……後天的なモノだ。
対する俺は、アバターという年を取ってもリセットできる肉体を完備。
おまけに何度でも蘇える機能を有し、いつ死んでも即座に蘇える権能まである。
北欧神話の神々が、持っていないモノを持ち合わせている存在。
それは戦乙女の『超越者』である『天死』よりも、厄介な相手だろう。
「つまり俺は、アインヒルドを守りながら戦う必要があると?」
「……必要ありません。私も末端とはいえ戦乙女、英霊でもない貴方にそこまでされるような筋合いはございません」
「まあ、それでも何かがあったら困るってのもまた事実だ。それじゃあ、これだけでも念のために持っていてほしい」
「これは……」
俺がアインヒルドに渡したのは、胸の辺りに宝石が装飾された鎧だ。
サイズ調整機能も搭載されているし、問題なく使えると思う。
「暫定名は『戦乙女の鎧』、とりあえず着てみてもらえないか? その間、俺はちょっと考え事をしてるから」
「……まあ、構いませんが」
「『着装』、『脱装』と言えばすぐに着脱可能だ。性能を見て、問題があったら言ってみてほしい」
ちなみに似た品に、『戦女神の聖鎧』なんて物もあるけど。
そちらはより優れた装備を自前で確保していたので、そのままお蔵入りしていた。
せっかくなのでと、その廉価版を生みだそうかと考えてできたのがこちら。
宝石部分を組み替えれば、誰でもいろんな能力が使えるからな。
そうこうしている間に、アインヒルドは着装を済ませていた。
「可動域に問題もありませんし、装備をしたことによる違和感や不快感もありません」
「装備者が鎧自体を邪魔だと思わないよう、策は講じてある。他には自動回復、破損修復に加え、そこの宝石の能力がある」
「これは……プログレスと同じ物?」
「アインヒルド自身の能力とは別に、宝石に仕込んだ能力も使える。そこに入っている能力は──」
この後、それを説明したところ──なぜかため息を吐かれた。
便利ではあるんだが……まあ、結構アレなことも否定できないな。
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