虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

ラグナロク その01



「──ラグナロク。今から起こる一連の戦いは、そう呼ばれています」

「あちらさんの行列は?」

「巨人族、亡者、そして神族の方々がこの地に集います。連結する世界の中で、ヴァルハラこそがもっとも優れた舞台上を有していますので」

「……つまり戦うわけか」

 ラグナロク、それは地球において北欧神話の最期を綴る物語。
 あらゆる存在が戦いを繰り広げ、神すらも死ぬ黄昏れ。

 だが、それに比べて少し緊張感が足りていないような気がする。
 ……こっちの英霊たちも、腕が鳴るとかニヤニヤしているし。

「俺の世界だと、ラグナロクってもっと破滅的なモノだって伝わっているんだが?」

「それは一度目だと記録されていますね。その争いから学び、それぞれの種族間の仲を取り持つために、それ以降のラグナロクはこのように集まって戦闘を行う大会のような形になったそうです」

「なるほど、つまりストレス発散として楽しめるラグナロクになったのか……ミニラグナロクとか、そういう感じだな」

 アインヒルドの説明を、バカレベルの解釈で理解する。
 何はともあれ、死亡率の高いイベントでは無いようで安心した。

 ヴァルハラにおいて、死とはその日を戦いで充実させられない時間という扱いだ。
 死んでもその日の夕方には、蘇ることができるからな。

「それで、ここの勝率は?」

「これまで数百回開かれているのですが、主に優勝チームは神族の方々ですね。特に主神様が参加なさるときは、確実にアース神族が優勝しております」

「で、そうじゃないときももう片方の神族が勝つと。それ、他のチーム勝ってるか?」

「……まあ、それなりに」

 全然勝ててなさそうだな。
 巨人はともかく、大半の強い死者を取られた亡者チームも勝ちづらいだろう。

「基本的にどういうルールなんだ?」

「部門ごとに分かれておりますが、基本的にはポイント制です。敵対チームのメンバーを倒すのですが、予め公表されているポイントが獲得できます」

「つまり強いヤツを倒せばいいと。総取り、それとも貢献で分配?」

「両方ですね。どんな形であれ、絶命させた者がポイントの半分を。残りの半分を貢献度で分配します」

 最初から最後まで討伐を独りでやれば総取りだが、誰かと協力すればその分は山分けということだ。

 ……割と考えられているな。
 北欧神話と言えば策略を仕組む神も居たから、納得と言えば納得だが。

《……穴、あるよな?》

《そうですね。意図した妨害が、仕込まれているようです。それを突破してこそ、というのが他の者たちの考えなのでしょう》

《脳筋ならそういうことになるのか》

 出来ない奴が悪い、そう考えているのかもしれない。
 まあ、別にいい……『プログレス』をより強く求める、いい機会になるからな。


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