虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布後篇 その15



 ドゥーハスト王国

 その国が存在する大陸は、休人たちの初期地点がある大陸から南西に位置する。
 海外との貿易なども行っており、いずれ辿り着く休人たちもお世話になるだろう。

 俺はそんな国で、ただひたすらタコ焼きを作っていた。
 その匂いは大衆を集め、サポートドールを駆り出して大儲けの真っ最中。

 他にもいろいろとやることもできたが、故あって焼くことに専念している。

「今はアップグレードしたサポートドールもあるから、本当に専念することができるんだよな……」

 前に来た際も屋台をやっていたが、そのときは祭りをやっていたから許可が緩かった。
 なので、行商人程度が即日で行うことは難しいのだが……コネは偉大である。

 その伝手を使ってタコ焼き屋は復活。
 あれから俺レベルのタコ焼きが無かったらしく、それを求めて大量の客がタコ焼きを求めてここを訪れた。

 ……まあ、タコはボス級の奴から回収していたヤツだったしな。
 それ以外の○○焼きも、大抵はアイスプル産の高品質の素材だったし。

 今日一日限定と触れ回ったので、その分のブーストもあるだろう。
 人間というものは、何でも限定品という言葉に弱いからな。

 ひたすら焼き続けていれば、待ち人も来るだろう。
 そんな適当な考えで始めていたことなんだが……うん、察してくれたようだ。

「──来ていただけましたか」

「久しぶりだね、『生者』さん。もう、ぼくのことも分かっているかな?」

「ええ、もちろん。あれから時間もございましたし、高貴な御方への態度も学びました」

「もう、そういうことを言っているんじゃないんだけどな……もっと気軽に話してよ」

 言葉通りの意味ではないだろう。
 周囲から突然人が居なくなり、代わりに現れた少女の主張は……間違いなく、もう一つの顔を意味している。

「──『宣教師』と会った。つまり、橋渡しの役なんだろう?」

「あの後大変だったんだよ? 急にここに来たと思ったら、『生者』さんのくれたって言う乗り物を自慢しに来たんだから」

「……購入だからな。それと、結局正解でいいのか?」

「ああ、うん。それでいいよ。特に正式名称はないから組織でいいけど、ぼくもあの娘も繋がっている」

 強すぎる『超越者』に対し、危機感を抱いた者たちが創り上げた組織。
 過去とは在り方が違うらしいが、変わらず『超越者』の監視をしているらしい。 

 目の前の少女──この国の第二王女は、その組織に席を置いている。
 しかし『超越者』ではない……つまり、そういうことだ。


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