虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレス配布後篇 その10
「──『元狙銃[精点]』、これが私の生みだした代物です」
狙撃銃型のアイテムをスリャに譲渡する。
命名して性能を強化し、『プログレス』の能力も組み込まれた逸品だ。
現状において、森人が使う狙撃銃という狭いジャンルであればトップだろう。
……競う相手が、なんせ俺しかいないから当然だが。
「……触れただけで分かる。これは、俺のために用意してくれたのか?」
「すでに二度もご利用なさっていますので、サービスですよ。……って感じでどうだ?」
「相も変わらず、その態度のままか。まあいいのではないか? 人族の中には、口調だけで相手への扱いを変える者もいると聞いた」
「──まあ、そういう輩も居るけどな。それまで築いてきた地位と、見合わない態度ってのは妙に気が立つんだよ」
要するに、相応の態度が感じってこと。
軽すぎてもダメな人が居るように、敬語過ぎてもダメな人もまたいる。
世の人々に求められるのは、そのバランス調整を行うこと。
……もしくは相手の気が立っても、それを維持できるようなナニカだ。
「ともかく、それが新しいヤツだ。いろいろと問題点はあるが、便利かつ万能っていう点に限れば保証できるぞ」
「……いろいろと分からない部分があるな。まずこの精霊文字で書かれた、火や水はそのままの意味でいいのか?」
「ああ。試しに撃ってみるか……ちょうど近くに、それができる場所があっただろう?」
作るのが好きな山人なので、その性能を試す場所もちゃんと用意してあった。
特にこの場所は、重要秘密染みたものばかり作っているので、それ専用の場所がある。
俺は顔パスでそこに入り、射撃場として的が置かれた所へ向かう。
狙撃銃をスリャが構え、ジッと狙いを定めて──放つ。
「的の中心を綺麗に撃ったな」
何度も使っているので、どうやら狙った場所に初めての銃で即中てられたようだ。
「……発火。だが、アレは何を燃料として火になっている?」
「見ての通りだが?」
「俺が視ても、精霊が集まりやすいモノを使用していることしか分からないんだが? 撃つ際に魔力を用いるわけでもない……あの二つ目の銃と似た感覚だな」
「正解。この銃はその強化版みたいな物で、とりあえず設定した七つのエネルギー概念を放つことができる。仮称だが火素、水素、風素、土素、光素、闇素、無素……それらを弾丸として放つのが[精点]だ」
精霊が集まりやすいのは、それが純粋な概念の塊だから。
例えるならそう、抽出に抽出を重ねた極上のエキス……みたいな感じだからな。
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