虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレス配布後篇 その06
彼との再会は後回しにして、森人の隠れ里の長(兄)に会うことに。
里長(弟)が先ほど、連絡してくれたので普通に会いに行けばいい。
「お久しぶりですね、里長さん」
「そうかな? あまり時間は経っていないと思うんだけど……そういえば、直接こうして顔を合わせるのは、いつぶりだったかな?」
「時間の捉え方が違いますからね。まあ、ともかく……まずはこちらを」
「弟から話は聞いているよ。けど、わざわざ私たちに使えない物をまたね……」
彼ら兄弟は共に『超越者』である。
剣を矢とし、自在に放つ『剣矢』の兄。
幻惑の聖木剣を振るい、他者の意識を自在に奪う『剥意』の弟。
とても強力な権能があるのだが……それゆえに、『プログレス』を使えない。
まあ、それ以外の森人は使えるので、初期セットは精鋭に渡したそうだ。
「お陰で私も弟も、強くなった者たちと激しい模擬戦をしなくてはならなくなった。警戒に必要な人数も減って、その分やりたいことができる人の数が増えたのだが……どうにも苦労ばかりさ」
「苦労……ですか?」
「力を付けた若者の中には、外へ出ようとする者が増えてね。この世界なら、まだ許容できるんだけど……どうやらどこかの普人族の影響で、別の星へ渡ろうとしているようだ」
「……そのようなことが。きっと、他を導く魅力に溢れた方なんでしょうね」
目を逸らしながら、適当に話す。
まあ、俺を殺しまくってレベルも上がっているだろうし、若い内に旅をしたいということだろう……それでもだいぶ年だけど。
森人のルールとしては、レベルと里長の許可があれば出ることができる。
なので模擬戦で勝利し、なんとしても出ようと頑張っているのだ。
……ちなみに脱走は協力者がいないと不可能なので、考慮していない。
本来、それぞれの星の住民が星間の転移を行うには、何かしらの制限があるのだ。
「そういえば……この後は山人の方にも向かうんだってね?」
「ええ、はい。だいぶ前に見せてもらった発明が、どうなったかも気になりますし」
「彼らも彼らで、君から貰ったプログレスの影響を強く受けたみたいでね。時折、相当デカい爆発音が響くようになったよ」
「……結界、張ってましたよね?」
騒音の訴えがあったらしく、俺が最初に訪れた時から防音結界が入り口にあった。
しかし、許容量にも限界があるようで……うん、それ以上の爆音が鳴っているのか。
「君が来てから、兆候はあった。だけど……そろそろ張り替え時だね?」
「……ぜひとも、手伝わせてください」
それを言わざるを得ない空気が、その場にはあった。
俺としても、やって損はない──さて、すぐに現場を確認だ。
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