虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布後篇 その05


 タイマーが鳴り響き、攻撃が止まる。
 精鋭たちによる猛攻は、これまででもっとも苛烈で激しく──『死天』製のアイテムの質も、相応に高かった。

 高すぎてもオーバーキルにしかならないので、低威力で死ぬことも大切なんだよな。
 魔改造するにも、低威力の方が加工しやすいのである。

「……ふぅ、これでお仕舞ですね」

「お疲れだな。さすがのお前も、あれだけ死ねば限界になるのか?」

「死ぬこと自体に限界はございませんがね。やはり人の身、連続した作業には飽きが生じてしまうものです」

「いやいや、死ぬことを作業にするなよ。それって狂人の類いの考え方だろ」

 そう思われても仕方が無いのだが、実際に死に続けると慣れが生じてしまう。
 ……まあ、普通の奴ならともかく、生命力HPが1しかないのだから死んで当然だ。

「ある意味、『超越者』らしくはありませんかね?」

「……まあ、そうだけどよ。なんか、俺たちまでそうだって思えそうだから止めろよな」

「……では、そうしておきましょうか」

 自覚がないのか……とか言ってしまいそうなところを、どうにか呑み込む。
 俺は忘れない、厳しく鍛えられたイベント時の出来事を。

「ところで、何をしに来たんだ? 理由を聞かずにやりあっちまったから、兄者にまだ報告できてないんだ」

「追加分の『プログレス』を、お届けに参りました。これから他の里にも向かう予定ですが、もっとも速くこの世界で訪れたのはこちらですので」

「そういや、そんなことを前に言ってたっけな。ずいぶんとあちこちに行くもんだから、すっかり忘れちまってたよ」

 イベント世界において、初めて出会った者の種族は森人だった。
 彼との出会いから森人の隠れ里を教えてもらい、今の多種族交流が成り立っている。

「そういえば、彼は今何を?」

「あー、なんだったっけ? お前の武器を自作するために、向こうの奴らといっしょに何かしているらしいぞ」

「……いつの間に」

「お前が光の銃なんて代物を生みだしたからな、アイツらも盛り上がっていた。けど、どうも昔使っていた方が良かったとか言ってたような……」

 ニヤリと笑みを浮かべる辺り、分かっていて言っているようだ。
 俺がこの世界に持ち込んだ銃は二種類──光学銃と魔動銃。

 前者は外交を通じて流通しているが、後者は彼に使わせた一丁のみ。
 それも回収してしまったので、この世界には存在しない。

 だからこそ作ろうとしているわけか……不可能ではないが、難易度は高いだろう。
 けどそれは、独りで挑んだ場合……彼らに依頼するのはズルいじゃないか。


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