虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布後篇 その02



「改めまして。こちらが『プログレス』となります、お受け取りください」

「増産を試みたが、失敗した。さすがは、我が友の生みだした能力の形だ」

「神々によって、その製造法に干渉できないよう仕掛けてもらいましたので。【魔王】様とて、現状ではできませんよ」

「そうか……現状では、か」

 ほぼありえないことだが、【魔王】の能力が神を上回ればあるいは……という感じだ。
 まあ、施錠するよりも開錠する方が難しいように、少し上回る程度じゃダメだがな。

「ふむ、使用に制限があるらしいが、我の能力はどうなのだ?」

「と、申されますと?」

「すでに知っているのだろう?【魔王】は配下に、職業を与えることができると。それは使役や支配の対象に含まれるのか?」

 ただの魔物よりも、【魔王】が率いる魔物が強い理由の一つだ。
 職業システムの恩恵にあやかれない者へ、【魔王】は擬似的にそれを与えられる。

 条件がいくつかあり、制限もある……が、人族よりも能力値の高い種族となり、職業が無くとも強者と渡り合える魔物たちが、もし職業を得れば──それは厄介でしかない。

「『プログレス』が使用不可なのは──まず大前提として『超越者』。そして、他者に己の権利を委ねているモノ。従魔、被使役、装備……そういった類のものです」

「ふむ。我の能力は支配下の個体にしか使えぬが、それは使役や従属といった条件ではない。可能性はある……と?」

「まあ、やってみれば分かることでしょう。移植の方は、私にお任せください」

 異形の多い魔物や魔族の場合、装備枠が少ないことあった。
 だが移植するなら、そういった制限は関係なくなる。

 サンプルとして、【魔王】は魔族と魔物を五人(体)ずつ用意した。
 俺はそれらすべてに移植をしなければならない……魔物相手にやっていてよかったよ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……魔物は不可能。しかし、魔族であれば移植は成功か」

「知性、というよりもシステムを扱うことができるかでしょうか? 魔物であろうと、使用可能なこと自体は確認しております。それでも使えないのであれば……たしかに、能力の方が関わっているのでしょう」

 実験の結果、『プログレス』の発現可能段階に至ったのは魔族のみ。
 魔物はそこまで至らず、移植したというのに発現しないままだった。

 位階1相当の魔物でも、移植すれば使えるはずだったのだが……【魔王】の能力以外に原因が無い以上、それが問題なのだろう。

 まあ、それでも可能な限り使えるために調査をするつもりだ。
 ……ついでに、【魔王】の能力の仕組みもつまびらかにできるといいな。


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