虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
マスター能力
──マスター能力。
何らかの概念を極めた能力。
他のシステムに当てはめると──職業で言うと固有職、スキルで言うなら固有スキル。
今のところ二人以上の同名能力の発現は確認されておらず、また性能が異様に高い。
そして何より、能力の説明文にとある記述がされている。
「『最も○○に相応しき主の象徴』、か。まあ要するに、『プログレス』が求める域まで能力を特化させたら、ご褒美に与えられるということだな」
「はい、その通りです。ただし、その種類自体は私も把握しておらず。何者かが発現させることで、そのマスター能力に限定して、知ることができます」
いかに『プログレス』を司る神とは言え、生まれたばかりの眷属神だ。
何らかのロック機能が掛かっている、もしくはそれを知るための力が無いのだろう。
「今のところ、発現数は?」
「三ですね。例の方、そしてウェポンとフレイムが発現しております」
「ウェポンとフレイム……武器と火だな。それに特化した能力ねぇ。どういう方向性で覚醒したのやら」
極めることが条件と言っても、それは別に火力で無くとも構わない。
射程や同時発動数など、何らかの形で他を圧倒できれば今のところは認証される。
今はまだ黎明期、発現する能力も成長させる能力も究極の域に達していない。
いずれは、無数の能力がそこに到達するだろうが……足りないものが多すぎるからな。
「ご主人様、コピーマスターですが……あちらはいかがなさいますか?」
「そのうち会いに行く予定だったからな。そろそろ、行くことにする。ついでだし、本人から使用心地の感想も聞いてこよう」
「お願いいたします。どうやら向こうも独自にストックを作り上げようとしています、ご主人様から何かしらお伝えください」
「何を? ……まあ、そのときに考えるか。どう転んでも、『プログレス』はより高みへ到達するだろうし」
三つ目の能力『コピーマスター』。
その名に相応しい能力保有者は、俺の関係者である……『プログレス』の名称が最初からマスターを冠するという異常性も持つ。
ちなみに能力はそのまんま、接触した対象の『プログレス』を一定時間模倣できる。
条件があって、それを満たせる発現者以外には使えないようなチート級能力だ。
ただ真似るだけの能力が高みまで至り、最強の一角になっている。
本来想定していなかっただろう、しかし彼ならばそれができて当然とも言えた。
──さて、行くとしようか……休人たちがラスボスと定める【魔王】の居城へ。
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