虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
アンヤク(01)
≪特例事項00──【救星者】によるアクセスを確認≫
≪当機関『儚想迷路』における最上位権限を発行いたします≫
メインサーバー──案役街と呼ばれる地にて、明滅と共に行われる宣告。
それを聞く者は誰もいない……生命体は、決してその地に辿り着くことがない。
≪情報を受信──暗躍街、闇厄街、案役街と各エリアを設定。各エリアへの侵入設定を変更……完了しました≫
≪■■■■をアバターと仮称。アバターによる案役街への侵入へ、最上位権限の保有を前提とするように設定が変更されます。代理条件を設定する必要があります──入力が完了しました≫
≪霊子変換室への侵入へ、準最上位権限の保有を前提とするように設定が変更されます。代理条件を設定する必要があります──入力が完了しました≫
≪未定義プログラムを確認──プログレスと仮称。規定プログラムとの統合、および最適化を実行しますか? ──入力が確認されました≫
本来閉じていた世界は、ナニカによって新たな光を浴びる。
かつては存在しなかった概念を、技術を新たに定義し直していく。
その意味を真に理解することは、たとえ知ろうとも誰にもできないだろう。
神非ざる、人ならざる『機械仕掛けの神』は、主の求めるがままに世界を改変する。
≪アバターのプログラムを使用、保管者たちへの呼びかけを行います……二人の肯定が確認されました。実行しますか? ──入力が確認されました≫
≪識別コード『造船』、『操者』の霊基コードを読み込みます……■■■■──仮称死に戻りを実行いたします≫
≪エネルギーが不足しております……一定量の供給を確認。起動可能量を達成、再度実行いたします≫
休人たちが行う死に戻りは、平たく言えば安全装置である。
異世界からの来訪者である彼らを、何度も来訪させるための保証とも言えた。
■が貯蓄した経験値を使用し、擬似■体を構築することで蘇生を実行する。
分離している以上、そこに失敗は無い。
今回『儚想迷路』は新たにインストールされた情報を基に、それを休人以外で行う。
予め設定された倫理事項も、使用者たちの肯定を確認したことでクリアされている。
≪抽出、構築、定着……全工程を達成。再起動完了──おはようございます≫
≪入力が確認されました。これまでのログをバックアップし、削除します。──完了しました、バックアップの閲覧にはパスワードの入力が必要となります≫
入力が完了しました、その言葉を最後に再び案役街は沈黙する。
その事実を知る者は、神にすら存在しないのだった。
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