虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

支配者会談 その17



 底辺まで落ちた俺の能力値に、だんだんと近づきつつある【情報王】。
 最後は無く、0を超えてマイナスになる能力なのでいずれ俺よりも弱くなる。

 だが、能力のからくりを知られれば知られるほど、【情報王】は耐性を得てしまう。
 なので、さっさと決着をつけるために籠手で触れたかったのだが……。

「…………。認めよう、『生者』。お前はこれまで接してきた者の中で、『騎士王』を超えてもっとも忌々しい相手だと」

「それはそれは、光栄ですね。ただ、絶対に『騎士王』の方が厄介ですよ?」

「故に使おう。真に知るべき相手にのみ、使おうと決めていた力を……不条理を」

「……嫌な予感がしますね」

 過去の【情報王】の中には、ありとあらゆる真実を見抜けると主張した者が居た。
 それは『SEBAS』にもできないこと、この世に絶対が無いことと同じだ。

「この能力は、ある程度情報を相手に伝えなければならない。記者の真似事だ、この俺がそんなことをしなくてはならない……内容は単純、俺には事実が分かるようになる」

「! 真実、ではないのですね……」

「お前が嘘だと思い込んでいても、俺には正しい情報が分かる。情報を扱う者に必要なのは、情報の正しさを見極めること──そしてこの力は、その過程をすべて棄却し、事実のみを導き出す」

 嘘発見器はやり方次第で、どうとでも潜り抜けることができる。
 本人に本当のことを伝えない、ただそれだけでいい。

 しかしそれは、回答者が真実だと思っているからこそ起きること。
 事実を見抜く力ならば、真偽の差など関係なくなってしまう。

「──“正情の報連網トゥルーネットワーク”」

 俺と【情報王】を包み込む網目の空間。
 内部では先ほど告げられた通り、すべての事実を知られてしまう。

「さて、まずははっきりとさせよう──お前の職業はなんだ?」

「──会社員・・・です」

「……チッ、もう一つの星での肩書か」

「嘘ではありません、事実ですよ」

 危なかった、ここでツクルの職業は? と聞かれていたらバレていた。
 そうしたら【救星者】の情報が洩れ、そこから耐性が付いていたことだろう。

 だが、一問目を誤った。
 すぐに二問目で取り返そうとしたのだろうが……甘い。

 俺は口から血を噴き出して倒れる。
 それを当然のような目で見降ろし、何をしたのかを【情報王】は暴く。

「──ッ!」

「舌を噛み切ったか。だが、それでどうなるというのだ? 死に戻りをすれば、自動的に俺の勝ちだぞ?」

 無回答。
 だが、【情報王】には事実が詳らかにされる──能力でその事実を知らされたとき、それはすべてが終わったとき。

《──『プログレス:ストロードール』の条件達成。報復能力“ダメージイーブン”を発動します》

 それが知られたのは──【情報王】が俺と同じように、口から血を噴き出したときだ。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品