虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

支配者会談 その14



 冒険世界最強の存在を問われて、知っていれば誰もが答える名は──『騎士王』。
 万能の『超越者』であり、種族としての限界を超えたレベルを有する存在。

 ありとあらゆる行動を人並み以上にこなせるうえ、世界に認められた守護者。
 ……逆に弱点と思える部分が皆無な、いわゆるチート存在である。

 俺は普段から接しているし、【情報王】もそんな存在は当然把握していた。
 そして、互いに勝ち得るためにあらゆる手段を許容するなら──こうなるわけだ。

「「…………」」

 共に『騎士王』の戦闘能力を、それぞれ異なる手段で模倣した俺たち。
 俺は動きと権能を、【情報王】はおそらく大衆の前で見せた動きと能力すべてを。

 俺たちは似ている。
 他者の情報を糧にすることで、己を強化している在り方が。

「それじゃあ、始めましょう」

「……ああ」

 互いに選んだ武器は剣。
 まあ、『騎士王』と言えば剣というイメージが強いからな。

 だがまあ、これが全然終わらない。
 同じ相手を再現しているうえ、その精度が尋常では無いのだ。

 王レベルの職業の再現能力に、こちらが食らいついていることに【情報王】は驚いているようだが、『SEBAS』がやってくれているのでそれは当然のことである。

 あちらはあちらで無数の武技を繰り出してきて、俺は武技ではなく動きのみで戦う。
 何せ結界で体を動かしているだけで、実際には権能しかコピーできていないからな。

「地力の差が出始めたな」

「…………」

「俺はお前の情報を集めれば集めるほど、優位になっていく。だが、お前はそのまま……いつまでこの均衡が持つのか」

「……そう、かもしれませんね」

 まだまだあった【情報王】の職業能力。
 名称は“情報優位”──相手のすでに知っている情報から行われる事象に対する、耐性が付くというものだ。

 つまり、今の【情報王】は俺と戦うときに限りその都度耐性を得られる。
 斬撃耐性、物理耐性、魔力耐性……とかそういう感じの耐性だろう。

 知れば知るほど、相手よりも強くなることができる【情報王】。
 勝つために新たな札を切れば、その分相手が強くなるという負の連鎖。

 一度きりの戦いならまだしも、【情報王】は代理人でもあるため残機がある。
 そのため、『死天』のアイテムラッシュで潰すという手段も取れない。

「となれば……アレを使うしかありません。すみませんが、一度死んでもらいますよ」

「できると思うか?」

「一度だけであれば。というわけで、さっそく一度目です」

「……なんだ──」

 言葉を言い切る前に、【情報王】は突如として命を失う。
 その腹には巨大な槍が突き刺さっており、その柄を握るのは俺。

「今の『騎士王』様は聖剣よりも、聖鑓を使うのですよ? どうです、知ってますか?」

「……屈辱だ。ああ、屈辱だ!」

 なんて会話をして第二ラウンド。
 この手はもう使えない……さて、使い切る前に終わってほしいよ。


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