虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

支配者会談 その12



 魔力の義手で『プライベートアイ』を破壊し続けているが、その数は全然減らない。

「閃光眼、炎熱眼、紫電眼、氷結眼……おまけに転移眼と時環眼ですか。なんとも厄介な魔眼のオンパレードですね」

「魔眼の知識があるのだな」

 ちなみに鑑定眼というステータスを強引に覗く物も浮かんでいるが、そちらはだいぶ前に作ったカウンター魔道具『深返の淵視鏡』によって無効化されている。

 開示される情報は鑑定の種類によって異なるが、鑑定眼は最上位に近い開示度。
 お陰で【情報王】のステータスが、それ以上の隠蔽によって隠されていると分かった。

「休人の多くは魔眼に興味津々ですので。さて、そろそろこちらも本格的に魔眼の処理に入りましょうか──『乱射の雨矢』」

 一本の矢を空に投げれば、それは数千数万という数になって降り注ぐ。
 自立型の『プライベートアイ』はそれをよけようとするが、いかんせん数が多い。

 となれば選ぶのは対処。
 自身の眼球に仕込まれた魔眼の力を解き放ち、矢の迎撃に当たる。

 それはつまり、視界に空を収めるということだ──そして、空には次の仕掛けが。

「──『万照の陽光』」

 目を潰す光量で、天から輝きが放たれる。
 消してしまえば再起動される、ならばそれ以外の方法で一時的にでも潰す。

 目という感覚器官を介している以上、それらには明確な弱点が存在する。
 全部の『プライベートアイ』の視界を捉えて、強引な目潰しが行われた。

「チッ……また使えばいいだけのこと」

「【情報王】さん、あなたは今視界を保っていますか?」

「…………」

「瞬時に切ろうと、矢の処理に視界を向けていたはずです。そして、複数の視界から膨大な量の光を浴びた」

 だがそれ以上に、念入りな準備が彼に隙を見せないでいる。
 当たり前だが、【情報王】には思考強化などの情報処理に関するスキルが存在した。

 それらによって別の感覚器官、また新たな『プライベートアイ』で場を把握する。
 人が情報の九割を視覚から得るとしても、別の部分で補うことが可能なのだ。

「聴覚、嗅覚、味覚、触覚、そして魔力器官など、方法は無数にあります。視覚を潰したからと言って、油断はできないことは重々承知していますが……目で捉えていなければ、分からない物もございます」

 取りだしたのは小さな箱。
 休人の[ストレージ]は魔力を介さない権能染みた概念なので、視覚が一時的に使えない【情報王】では把握不可だ。

 維持していた『ワンダーハンド』は、箱を出してから少しやり口を変えた。
 破壊していた『プライベートアイ』を、一つずつ着実に箱に誘導していく。

 箱はただ、その空虚な穴を開けるだけ。
 すると勝手に近づいてきた球体が、その内部へと取り込まれていく。

 それに気づいたのだろう、【情報王】が一瞬ピクリと反応する。
 破壊じゃなく、封印ならと思ったが……どうやら成功したようだな。


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