虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
支配者会談 その11
「【非業商人】さんの代理人、『生者』ツクル。私が求めるのは、独占無き生活の改善。さぁ、始めましょう」
「……なんだその名乗りは。必要なのか?」
「いえいえ、思い付きですよ。もしも、誰かがこの戦いを覗き見ているのであれば……再度、認識すべきであろうと思いまして」
空を漂うのは、再び【情報王】によって展開され始めた球体『プライベートアイ』。
そして、俺が予め準備しておいた撮影も可能なドローン。
互いに互いを信用しておらず、他に見せる『眼』を用意していた。
「……まあいい。【情報王】、求めるのは暗躍街および闇厄街、そして案役街すべての支配。俺がこの地を統率することで、誰もが不幸を嘆くことが無くなると誓おう」
「不幸を、ですか。幸せになる、とは違うのですか……っと、さっそく攻撃ですか」
「力無き理想に、意味など無い。そして、世界でもっとも偉大な力とは──情報だ。征する者はあらゆる危険を知り、そのうえで選択する権利が与えられる。そして俺は、もっとも情報を知り得る男だ」
先ほども閃光眼という魔眼を使っていたのだが、どうやら『プライベートアイ』を媒介に発動しているようだ。
再び瞬いた閃光は、結界に防がれていた。
飛んでいた『プライベートアイ』の一体、その目の部分が代わりに閉じられている。
「【情報王】さん、貴方はいったいその魔眼の数々を……どこで得たのですか?」
「外に居る、【非業商人】からに決まっているだろう。奴は対価を用意さえすれば、どんな物でも手に入れる。情報を持つ私ならば、すなわちありとあらゆる物を要求できる」
「……間違いなく天然もの。それを、こんなに確保しているとは」
魔眼とは三種類存在する。
生まれつき発現する先天型、成長や施術によって発現する後天型、上位存在からの祝福や特殊な装備の重用で発現する干渉型。
天然ものとは、それらの魔眼の中でも先天型と干渉型の一部に付けられた別称だ。
基本的にデメリットはなく、とても高性能ということで……非常に裏では価値が高い。
次々と、『プライベートアイ』に仕込まれた魔眼を開眼させた。
定番の発火や発電だけでなく、座標入れ替えや限定的な時間操作など……多岐に渡る。
「それほどまでに……いえ、これ以上は語らずとも分かりますか。では、こちらからも行きましょう──『ワンダーハンド』」
魔力でできた腕を無数に生みだし、それらによって球体を壊していく。
壊れると消えるが、魔眼は消耗せずに、再起動すれば収まった状態で復活する。
……持久戦なんだよな、これって。
まあそれでも、こちらも時間を掛ければ有利にできるからいいけどさ。
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