虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

支配者会談 その10



「……逝ったか」

 互いの攻撃が顔面にメリ込んだが、俺は何重にも結界を準備していた。
 そして、使用した『撲殺の拳帯』……これは拳用のグローブみたいなものを。

 それを装備していたのだ。
 ただし、巻くのは自分の手じゃない──その上にある結界の膜にである。

 結果として、俺の拳は『拳王』が考えるよりも大きなものとなっていた。
 離し過ぎると拳として認識されなくなってしまうが、少し膨らませるだけなら可能だ。

「さて、他のところは……相打ちか?」

 俺が『拳王』と闘っていたように、離れた場所で【革命英雄】と【奴隷王】がぶつかり合っていたはず……しかも、【革命英雄】はサービスで残機付き。

 しかし闘いを終えて場を観てみれば、残っているのは【暗殺王】と【情報王】、そして俺だけだった。

《互いに本来は支援職。壮絶な戦いを繰り広げたのち、お二人は退場なさりました》

「……英雄様には『フラッグフラグ』があるから、勝つと思っていたんだがな」

 運命操作の『プログレス』。
 最強っぽいが実際には集団に作用させるため、一人ひとりに働く運命操作はそう強いものではない。

 それでも使用者本人に力を集中させて使うので、それなりの効果があったはずだ。
 情報は『SEBAS』が把握しているし、答えをさっそく尋ねる。

《『フラッグフラグ』の効果があったうえでの、相打ちとなりました。お二人の差は経験とレベル、それを補った結果となります。二度の命を奪われ、【革命英雄】も退場です》

「……のじゃロリ、だもんな」

 長命種なのだ、【奴隷王】も。
 まあ、その分レベルも上がりづらいはずだけど、『SEBAS』が言うからにはそちらでも勝っていたということ。

 職業の種類的に【英雄】の性質を有している英雄様の方が有利だったはずだが、それすらも超えていたのか?

《いえ、そちらは自己隷属という方法で乗り切っておりました》

「定番だな。それってどういう効果だ?」

《旦那様のイメージするところで言えば、マリオネットのようなものでしょうか? 命令することで行動補正が入るため、渋々と言った形で行使しておりました》

 彼女なりの信念があったのかもな。
 そんなことを思いつつ、とりあえずの考察は止めることに。

 ──俺を待つ、最後の二人がこちらを観ていたからだ。

「さて、お待たせしました。【暗殺王】さんと【情報王】さん、お二人とも決着はつけないのですか? 非力な私としては、ぜひとも漁夫の利を取らせていただきたいのですが」

「星渡りの民たちの、『魔核攫い』と似通った言葉だったな。残念だが、それはない……ここからは、お前と俺の最終決戦だ」

『……依頼は果たした』

 すでにバレていたようだが、【暗殺王】にはここまでの時間稼ぎを頼んでいた。
 これ以上残る気は無いようで、【暗殺王】はすぐさまこの場から退く。

 ──そして、二人だけが残った。


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