虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
支配者会談 その05
基本的なルールなどはほぼ同じなので、詳細は割愛させていただく。
戦闘に向かないということで、参加しないのは【非業商人】、『薬毒』、『賭博』。
彼らと彼女はそれぞれ自分の主張を任せられる人物に、自身の権利を預ける。
そして、預けられた人物にはある種の特典が与えられることになった。
「では、【革命英雄】さんを『薬毒』さん。『賭博』さんが【情報王】さんを。そして、【非業商人】さんが私を推薦しました。ですので、お二人にはこちらをお渡しします」
俺は参加していること自体が特典によるものという扱いで、それは与えられない。
しかし主義主張はどうあれ、ルールは公平にプレゼントを彼らに渡す。
石型のアイテムを紐で繋いだ代物で、この戦いにおいて非常に便利な魔道具だ。
「──これは退場するほどのダメージを受けた際、一度だけそれを癒します。無効化するわけでも防御するわけでもなく、あくまでも受けた後にそれを治すだけですので、予めご了承ください」
「死なないわけではないのだな」
「それでは不平等ですので。死ぬほどの痛みが、そのことを自覚させてくれます。他の皆さんも、二回死ぬほどの攻撃をすれば退場させられることを覚えておいてくださいね」
「使えるならば使わせてもらおう」
英雄様も【情報王】も、俺から受け取ったアイテムを素直に首から掛ける。
分かっているのだ【情報王】だって、保証がどれだけあっても足りない相手だと。
「では、開始で──」
『死ね』
開幕早々、俺に向けられて至る所から攻撃が放たれた。
いやまあ、一番厄介な相手だって認識されているって話なんだけどさ。
やっていないのは契約済みの【暗殺王】、そして生真面目な【革命英雄】のみ。
あとは誰も彼もが、さまざまな攻撃手段を用いて俺に攻撃していた。
オーバーキルである……まあ、2ダメージ以上出せば全部そうだけどさ。
「開始です……やれやれ、私もいきなり死にたくはありませんので」
「チッ、結界か」
「直接『拳王』さんが殴りかかってくるならばともかく、遠距離からの攻撃であれば防げるように設定していますので。さて、他の皆さん同士でも戦ってくださいね」
初期から使っている鞘型のアイテム。
転位や転移だけでなく、俺が死なないための結界を常時展開している代物。
普段の死に方で退場と言うのもアレだし、ちゃんと展開していたのだ。
そもそもこのルールは、俺が勝つためのものだ……最後に立つのは俺だけである。
「お前を倒せば、本来の争いに戻るさ。死んでも死なない化け物が」
「不老不死を追い求めるということは、私と同じ存在になるということですよ?」
「違うだろう。お前たちは死なぬ、そして封印されてもなお逃げ延びる。化け物だよ、本当の意味でな」
「まあ、そうかもしれませんね。ですが、それでも勝たせてもらいますよ」
全員がそれぞれ、異なる目的を以って俺を殺そうとしてくる……まあ、『プログレス』で遊ぶにはちょうどいいな。
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