虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
支配者会談 その04
まあそれから、全員が自分の主張を述べていくことになる。
特に浮かばないとか、全街を繋げるとか、いろんな意見が出た。
中には俺や『薬毒』さんのように、争いを望まない派閥もあったのだが……残念ながら多数派ではない。
そして今回、重要なのは一番最後まで待たせた男の主張。
彼──【情報王】は全員が清聴する中、自身の主張を述べる。
「俺がこの街を支配したら、そのすべては俺の統括下に入ってもらう。力ある者は管理下へ、力無き者はすべて捨てる。完璧な世界をこの箱庭に創り上げるのだ」
なんだろう、このいかにも悪役って感じの理想論は。
当然、周囲の者たちは反感を覚える……しかし、それすらも想定内。
「まだ武で語りあうには早いはずだ。そうだろう、『生者』?」
「ええ、皆さんも落ち着いてください。ですが【情報王】さん、私からいくつかご質問をしても?」
「構わん」
「ええと、ではさっそく──勝てます?」
正直、本当は全員の主張を聞く必要は最初から無かったと言える。
今【情報王】がネタバレした通り、結局最後は力づくで決めることになるのだから。
先ほどの宣言で、全員を敵に回した。
だがそれでも、【情報王】には勝つだけの自信があるようだ。
「無論だ。この場に居る者たちは、その大半が武によって君臨している。ならば俺もそれに習って、圧倒的力を以ってこいつらを叩き潰すべきなのだろう」
「……またずいぶんと傲慢な。ですが、どのように決着をつけるつもりですか? お前の生みだす空間だ、死ぬことはないはずだ。そこで最後に残った者が勝者、ということで異論は無いはずだな?」
「ええ、これは後ほど説明するはずだったのですが……まあ、いいでしょう。参加を望む皆さんには後ほど、この場で誰の主張を通すのかを決めてもらいます。代理人でも構いません、最後に立った者が勝者となります」
この場には、全然戦闘には向いていない能力の持ち主も居るので、勝者に自身の主張を託すというやり方もOKである。
ちなみに箱庭世界と違って、こちらはあらゆるアイテムの持ち込みが自由。
対人での争いには、ありとあらゆるものを許容するのが一番なのだ。
「ちなみに、私も参加しますよ。現状維持、それを主張するためには、【情報王】さんに勝たなければなりませんが……少しでも数は多い方がいいですし。こちらも、異論はありませんよね?」
「好きにしろ、それでも勝つのはこの俺だ」
というわけで、これまでホログラムを投影していた機械のモードを切り替える。
機械が通信を行うことで、迷宮に仕込んだ魔道具が起動──結界が構築された。
さぁ、戦いを始めよう。
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