虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
支配者会談 その01
迷宮に用意したその空間には、環状のテーブルと椅子、それに機械が置かれている。
椅子の前にはそれぞれネームプレートが置かれており、誰が座るか決まっていた。
「──よく集まってくれました、皆さん」
その席すべてが埋まっており、俺は環の中で大げさに体を動かす。
司会進行を担当し、今回の会談を円滑に行うサポートをするためだ。
「皆さん、お互いをそれぞれ紹介する必要はないと思います。それぞれご自身で把握しているだろうと思いますので、さっそく本題に移らせていただきましょう──この街が誇る二つの街、隠された三つ目について」
機械を動かすと、ホログラムを投影する。
映る画面は二つ──暗躍街と闇厄街のリアルタイムの映像が、それぞれに表示中だ。
「『拳王』さん、『賭博』さん、【情報王】さん、【暗殺王】さん、【非業商人】さん、【奴隷王】さんの居る暗躍街。【革命英雄】さん、『薬毒』さんの居る闇厄街。これらが現在、知られている街のすべてです」
そして、と言い三つ目の画面をホログラム装置に映し出させる。
俺が『SEBAS』に頼んで見つけ出してもらった、最後の街のイメージ図を。
この場に居る者たちは、黙ってその図を視ることに……情報は知っていても、その全貌はまだ把握していないだろうしな。
「案役街。その正体は、霊体のみでの活動を可能とした電脳世界となります。皆さんに分かりやすく説明するのであれば、この言葉が適しているでしょう──不老不死の世界」
一部の知らなかった者たちは、少々大き目なリアクションをしている。
だがまあ、大半の者は知っているので冷静な表情ばかりだ。
霊子変換室で体を読み取り、その魂だけで活動できる世界。
それこそが案役街、選ばれし者だけが向かうことのできる場所。
「肉体は保存され、退場と共に霊子変換室を通れば元に戻ります。本来の用途は魂の許容できない肉体の修繕を行う際、快適に過ごすための場所ですが……それを管理していた者たちは、すでに摩耗により消えています」
不老不死とは言っても、それに耐えることができないパターンが多い。
記憶の凍結などを行い、その膨大な時間を意識しないことが重要だ。
案役街の場合、記憶のバックアップが用意されているのでそれで忘れることができる。
神代において、そんな問題は些細だと考えられていた証拠だな。
「さて、この地へ向かうためには闇厄街を通らねばなりません。そこにある霊子変換室を潜ることでしか、彼の世界は現れません。そして起きたのが、先の一件──では、会談を本格的に始めましょう」
俺がそういうのと同時に、立ち上がるのは英雄様。
視線を向ける先は、当然【情報王】……さて、どうなるのやら、
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