虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

支配者交渉 その07



 暗躍街 中立区 迷宮『修練の間』 

 一階層において、魔物が出現しないという極めて希少な迷宮。
 だが、それには理由がある──ここが人造の迷宮だからだ。

 神代に創られた魔道具『儚想迷路』。
 暗躍街を内包するシェルター型の魔道具内は、ノアの箱舟の街版と言っても過言ではない……機能などは全然違うが。

 この迷宮もまたその一環。
 人々が中での生活に飽きないように、過去の人々が残したエンターテイメントなのだ。

「だから一階層でパーティーを募集して、下の階層で冒険する……なんて、迷宮が損をするようなこともできるわけだ。さて、ここなら安心して準備できるな」

《空間隔絶を済ませました》

「ご苦労様。あとは、これを招待状が無ければ入れないように仕込むだけ。──:DIY:開始だ」

 いつもの宣言をすれば、俺の能力値は飛躍的に上がっていく。
 俺の最大値である999よりも上、その名が冠する通り──∞と化す。

 とはいえ、∞になってもできることは結局生産だけ。
 それは【救星者】の能力“職業強化”を用いても、今なお変わらない。

「けどまあ、少しぐらいは違いも生まれたよな。切り替え──『生産特化』」

《畏まりました。職業、称号の切り替えを実行いたします》

「毎度毎度、微妙に違うのにちゃんとやってくれて助かるよ。やっぱり『SEBAS』に頼むと、そういう気遣いまでしてくれるから助かるよ」

《お褒めにあずかり光栄にございます》

 先ほど説明した“職業強化”によって、俺はある程度職業スキルを常時発動可能にしている……が、それでもまだ未開放のモノが多く、それらは随時セットする必要がある。

 同じくセットしなければ発動しない称号なども、自分でいちいちやるのは面倒臭い。
 なのでそこを『SEBAS』に任せて、最適なモノをチョイスしてもらっている。

「“設計図面”、“過程把握”っと……便利だよな、職業スキルも」

 一度製作したアイテムは、自動化して造ることもできるが……品質が落ちてしまう。
 マニュアルで行う場合、レシピを頼りに同じことを繰り返さねばならない。

 そこで使ったのが二つの職業スキル。
 脳内で造り上げるアイテムの図面を浮かび上がらせ、完成までの過程が動画のように流れるという組み合わせ技。

 それに加えて:DIY:があるので、俺はただ創りたいと念じるだけでアイテムが自動的に生みだせる……俺の場合は、まったく品質が落ちないというチートである。

「これなら職業スキルの分と:DIY:の分を同時にできるから、作業効率が上がるな」

 うん、もともと:DIY:でできたことではあるんだがな。
 すべての生産系能力の頂点に立つ、それこそが:DIY:なのだ。


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