虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
支配者交渉 その05
俺が作り上げた蘇生薬の秘密を、すでに把握していた【非業商人】。
ごく少数にしか知られていないのだが……【情報王】然り、恐ろしいな。
「私の力はどうやら、視ることに長けたモノのようでしてね。とはいえ、製作者を暴けるようなモノでもございませんでした」
「と、言いますと?」
「価値が分かる、とでもいいましょうか。ツクル殿がお作りになられたアイテムは、どれも価値が高いのです。それはポーションの質が高いといった問題ではなく……それ以上の価値が秘められた、という意味なのですよ」
「『プログレス』の能力を、深く信じているのですね。てっきり商人という方々には、まだ現れたばかりの奇妙な力を疑っておられるのかと」
実際に、発現させたはいいが使っていない者も確認されている。
非戦闘職が攻撃特化の能力だったり、回復職が攻撃魔法用の能力だった……とかな。
どうやら推測から俺だと暴いたらしい彼だが、それはつまり信じているというわけだ。
彼が発現させた鑑定系の能力が、他のスキル同様に有用であると。
「商人たるもの、使えるモノは何でも使うのですよ。行商を行っているツクル殿もまた、そうして無数の伝手を得たのでは?」
「……そう、でしたね。なるほど、それで信じるに値すると考えるようになったと」
「使っていれば、自ずと認識できますよ。出自は謎ではあるが、それは休人の語る世界における私たちと同じであると。魔力も、スキルも存在しない、こちらからしても未知な世界があるのですから」
「とても、面白い考え方です。そういった考えを持つ方がいる、それを知ることができました。……さて、話を戻しましょう。参加にあたって、何か要求されることは何かございますでしょうか?」
二つのまったく異なる世界を知っているからこそ、俺たちは違和感を覚えられる。
そしてそれは、彼らもまた同じこと……知ることさえできれば、結論は同様だ
とりあえず、俺に関する話は強引に切り上げて、会談に関する話を進める。
どうやら【非業商人】は、参加自体は受け入れてくれているみたいだしな。
「要求……ですか。そうですね、ツクル殿だけではなく、それは彼らにも通ずることなのでしょうか?」
「いえ、あくまでも主催をしようとする私だけですね。要求があるのであれば、会談の場でぜひともお願いします」
「そうですか……いえ、ではツクル殿にお願いしたいことを伝えておきましょう。実は、欲している物がございまして……」
「分かりました、お伺いしましょう」
そんな会話をした後、俺はその要求物を渡してこの場を去る。
……普通なら手に入らなくて、困るレベルだったな。
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