虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
支配者交渉 その03
「……なるほどのぅ、第三の街を【情報王】から守るために協力しろ、と」
「端的に申してしまえば。とは言ってはいますが、皆さんに求めているのは舞台に上がることのみ。それから先、皆さんがどのような振る舞いをするかはお任せします」
本題の二つ目、これから行われる強者たちの集いに【奴隷王】を招待する。
貸し借りは今済ませたので、とりあえずは対等な交渉だ。
「……何をしてもよいと?」
「大切なのは、その場にこの地を牛耳る者たちが集うこと。いかに【情報王】さんであろうと、多勢に無勢となります」
「奴は対象を知ることで有利となる。故に隠し札が無ければ敗北は必須じゃが……上手い具合に手に入ったな」
「とはいえ、監視網がございますので。そちらにも警戒しなければいかないのは、大変になるでしょう」
新たなシステムである『プログレス』。
俺が渡す前から【情報王】は手に入れていたが、そのすべてを把握していないので、まだ完全に能力の対象には含められない。
……ちなみに妨害装置はすでに作成済み、妨害工作は可能ではあるが。
ただ、それをやり過ぎると【情報王】の方も対策をしてくるだろう。
鼬ごっこというわけでもないが、そう望む限り『プログレス』は成長する。
いかに開発者とて、そのすべてを御することはできないのだ。
「貴殿のその話、乗った者は?」
「──闇厄街の英雄様、【革命英雄】」
「なんと、あの生娘が……くふふっ、なるほどのぅ。あちらには赴かぬゆえ、伝聞などでしか把握しておらんかったが……このような機会であれば、問題なかろう」
「あまり無茶はしないように。彼女は真面目に、あの街を守りたいのです」
このまま野放しにしてしまえば、間違いなく【奴隷王】は手を出そうとするだろう。
問題は無いだろうが、無駄な争いを起こされても困るからな。
「……ふぅ、少々滾ってしまっただけじゃ。これだけでも、行く価値ができたというものじゃな。うむ、乗ってやろうではないか。ただし、その地での振る舞いに関して、いっさいの文句を言うでないぞ」
「ええ、振る舞いに関しては。ただ、その場で行おうとしていることが、間接的に妨害行為となってしまったとしても……お許しいただけますよね?」
「まあ、別に構わぬよ。妾は、妾の行いを阻む者を許さぬ。たとえそれが『生者』、貴殿であろうとな」
「ええ、どうぞご自由に。私が必要としているのは、その地に集うことのみ。私を瞬時に消し去り、目的を果たすこともまた自由ですので。それが最適解ならば、ぜひとも」
というわけで、【奴隷王】との交渉も終わりである。
……次は、まだ行ってない場所に向かうことにしよう。
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