虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
支配者交渉 その02
「まずはチラシを公開っと……宣伝は大切だし、周知の事実って怖いよな」
それが本来正しくない情報であっても、最終的に実行できれば正しい情報だ。
今回は嘘がギリギリ存在しないチラシを作成し、ドローンでバラ撒いてみた。
「もちろん、普通は乗らない。こんな紙の情報だけで、誰が信じるか……けど、それが事実だと本人から分かれば、このチラシはその価値を高める」
それは箱庭同様、話し合いをしようという内容とその実施場所が記された場所。
製作者の欄を用意して、『生者』と書いておいたのでごく一部の者は理解可能である。
ツクルであり【救星者】であり『生者』であり、と肩書が多いのがEHOでの俺だ。
中でも『生者』は強者相手にしか使っていないので、知られる機会が少ないんだよな。
「──少しだけ予定が狂うが、まあ一気にやる方がいいか。別の機会にまた来たら、新しい人に会うのは当然だしな」
いちおう『プログレス』を配る順番は、訪れた土地順でと考えていたが、行った気になり忘れていた場所も多い。
……第六感的なものが、行くなと言っていたと気がするというのも事実。
というか、あそこは『プログレス』を使う奴が知人に居ないからな。
というわけで、配る順番を変更することになった。
タクマにも話した通り、最初はまずあそこである……よし、ボタンを押しとこっと。
◆ □ ◆ □ ◆
歓楽街
だいぶ前に取引を行った際、来訪が分かるように魔道具を渡しておいた。
今回もやはり音声がアレだったが、快く俺が向かうことを承諾してくれる。
「──お久しぶりですね、【奴隷王】さん。ああ、こちらがお土産です」
「うむ、くるしゅうないぞ……さて、中身はいったい……おおっ、これはこれは。なかなかにいい趣味をしておるな、『生者』よ」
「今回は無難に、食品の方を。味の方は保証しますよ」
「分かっておるわ。ぐふふ、夜の戦が捗るではないか……今宵は十人、いや二十人であろうとイケる気がするぞ!」
何も聞かなかったことにしておく。
彼女には彼女の考え方があり、彼女を慕う者たちもまた、彼女のそういった行為を望んでいるのかもしれないからな。
だが、本題を忘れてはならない。
二つある要件の一つ、『プログレス』の配布を先にやっておかねば。
「そして、こちらを──『プログレス』、すでにお持ちですか?」
「いや、噂にはなっていたがな。妾が買い集めようとする前に、どいつもこいつもすぐに奪っていく。妾の専門は奴隷ゆえ、そちらには上手く手が回らなかったのじゃ」
「そうでしたか……。ご心配なく、私の伝手で百個ほど、ご用意できております。どうかこちらを、借りの返却ということで……いかがでしょうか?」
結構渋ったのち、奴隷たちの戦力強化を考えて頷いた【奴隷王】。
……どうか彼女たちの中から、反逆を可能とする能力が目覚めてくれますように。
──いい意味で、だろうし、そっちの方が面白くなりそうだしな。
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