虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
霊子変換室 その10
闇厄街
あれから霊子変換室の掌握を済ませ、一時的に侵入を抑えることに成功した。
それも完全では無いのだが、転移などによる侵入は不可能だろう。
「──皆さん、ご無事ですか?」
「おおっ、君か。『生者』、内部での防衛は成功したのだな?」
「ええ、皆さんのお陰ですね。しばらくは、大丈夫かと──“ミラクルハンド”」
予めインストールしていた『プログレス』が起動し、その能力が発動する。
魔力に干渉できる半透明な大男サイズの腕が生まれ、休人たちの首を絞めていく。
本来は攻撃力×魔力で性能を高めるというもので、首を圧し折ることもできる。
今の俺は職業スキルの補正を受けているため、攻撃力も1以上あるんだぞ。
「助かった。しかし……どうやって判別しているのだ?」
「『プログレス』があれば、識別可能となりますよ。あまりおすすめしませんが……こういった場合は、付けておいた方がいいかもしれませんね」
「なるほど……これは休人と同じことができるというが、そういったことまで」
「便利ですよね。決して、彼らだけが独占していい物ではございません」
何でも保存できる[ストレージ]。
これを持っているだけでも、輸送業という形で休人は食っていける。
こちらの人々が空間魔法やそれ系統のスキルを発現する可能性は低く、また魔道具として手に入れるのは大半が金持ちだ。
しがない商人は彼らに依頼し、輸送してもらうしかない。
……たとえ一部をパクられるかもしれないと、そういった覚悟が必要だとしても。
「しかし、これからどうするつもりだ? 今回は凌いだが、奴らは不死身。再びこの地を狙ってくるだろう」
「一時的に封鎖をしましたので、一日ほどは安全です。私を含め、入ることはできませんのでその間に動くべきです」
「……それはつまり、実力行使をしろということか?」
「どう捉えてくださっても構いませんよ。数は必要ありません、今回の依頼に失敗した以上相手も動かざるを得ません」
さすがに前回同様、支配領域まで殴り込みに行く必要はない。
しかし相手──つまり【情報王】も、今回の失敗で痛手を負っている。
依頼は気前の良さを見せたかったのか、失敗すれば損するようにできていた。
もともと休人からは根こそぎ奪っていたのだし、そこに関しては何も困らない。
だが、霊子変換室よりも先に関する情報がいっさい無いというのが問題なのだ。
情報があればあるほど強くなる【情報王】だが、ある程度条件が課せられている。
「不完全な文献であればともかく、彼らに渡していた『プログレス』の眼を送られてしまえばお仕舞です。その前に、どうにかしないといけません」
「長期戦になるか?」
「いえ、いっそのことこちらから打って出ることにしましょう。それに乗るも反るも、彼ら次第ということで」
少し前に似たようなことをやっているし、その要領でやればいい。
……さぁ、宣伝を始めようか。
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