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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

霊子変換室 その09



「──魔法の方は、どうやら間に合わなかったようだな」

「おいおいこれ、壊れる内からどんどん直りやがるぞ! どうなってやがる!?」

「“マジックリペア”。ある『プログレス』が保有する能力だ。魔力を籠めれば籠めるほど、耐久度が回復する。お前が壊す間も修復し続けて、発動に漕ぎつけたわけだ」

「さっきからいろんな『プログレス』の力を使っているな、ツクル。それがお前の能力なのか?」

 まあそういう『プログレス』も存在するので、不敵な笑みを浮かべて肯定する。
 ……今は“アナザーフェイス”を使っているため、どう見られるか分からないけど。

「チッ。お前はいつもいつも、ランダムだと当たりを出すな!」

「当たりなわけじゃない。俺が当たりにしているだけ……って言いたいけど。初期は全然だったし、たぶんルリが居たからだな」

「アズルか…………否定できないな」

「まあ、そろそろ終わりの時だ。積もる話もまだまだあるが、一気に行かせてもらうぞ」

 すでに“新星命爆ビックバン”が臨海寸前、間もなく起動して霊子変換室を焼き尽くすはずだ。
 俺は死んでも問題ないが、ロームたちは耐えられないだろう。

「二人とも、来い──“無盾ニルシールド”」

「壊しづらそうな魔法を出したな。これって何の魔法なんだ?」

「“次元固定フィックス”、という魔法らしい。勘で試していたら、成功した魔法の一つだ」

《旦那様、あの魔法は次元魔法という種類の魔法です。次元という高位の概念を操り、個人で異世界へ向かうことすら可能とする習得難易度が最上級の魔法となります》

 まさか、『SEBAS』がそこまで言う魔法なのか……いや、それ以上に俺は驚いている点がある。

 そんな魔法を『プログレス』の干渉によって、使えるようになるのだ。
 俺もロームの『グランドマロット』は使えるし……うん、研究のし甲斐があるな。

「けど、今は先に対処しないといけないみたいだな──『デッドタナトス』」

 発動と同時に、俺が展開していた魔法が完全に起動する。
 すべてを灰燼に帰す星の終わりは、発動者である俺諸共に爆発を生み出した。

「……まあ、本来は俺って発動した瞬間に死亡しているからな。発動地点に命を設置して代用したけど、術者が核となって起動するはずの魔法だしな」

「足元か……油断したな」

「死神の鎌を名乗るだけあって、知覚しづらいようになっているんだよ。悪いなローム、あとでお疲れ会でもやろうぜ」

「あっ、それ俺もよろしく」
「おれもだぞ!」

 三人の体に突き刺さる『デッドタナトス』が、死を遅らせるからこそできる会話。
 それも間もなく終わる……ロームが頷くのと同時に、彼らは消えていった。

 ──さて、これでしばらくは休人も来なくなるはずだな。


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