虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

霊子変換室 その08



「両方を選べばいいだろう。キーシ、お前は魔法の破壊をやれ。どうせ、最初からやる気だったんだろう? 少しはサポートしてやるから──“耐性付与エンチャントレジスト”」

「おおっ、全属性の付与かよ。へっ、なら焼け死ぬ前にぶっ壊せそうだな!」

「ハックはツクルを殺せ。手段は何でも構わないが……『死天』はよく死ぬんだ、一度では消えないだろうが何度かやれば死ぬ」

「へっ、任せな!」

 ロームの指示を受けて、二人の『天』たちは行動を開始する。
 万象を破壊するキーシは“新星命爆ビックバン”を、ハックは俺を殺すために。

 一つ不正解があるとすれば、俺が死んでも魔法が解除されない点。
 いちおう発動までの時間は遅らせられるのだが、それでも決して消えることはない。 

 対して魔法の方は、ロームの施した禁忌級のバフのせいで直接砕かれつつある。
 時間の問題だし、アレを砕いたとなれば相当の強化バフとなってしまう。

「さて、どうしたものぁ──」

「っし、一個目……やっぱり消えないか。マスター、それどうなってんの?」

「この場で死に戻っているだけだ。ただし、こんな風にデメリットは無しだな。ついでに言うと……残機は無限だぞ」

「十回殺してもダメか……連続コンボでおれの残機も増えたりしないか?」

 十回の死に方をそれぞれ異なるやり方にしている当たり、さすがはハックである。
 武器が七回、薬が二回、そして──『天』の権能が一回だ。

「それにしても……厄介な力だな。『暗天』の効果は、五感三つで捉えたらもうアウトになるのか」

「なっ、なんでそれを!?」

「あれ、知らないのか? 死にまくったら貰える称号の中には、死亡理由が分かる称号もあるんだ。俺はその上位版として、その詳細まで把握することができる。結構便利なんだな、その力って」

「ま、マジか……ちょっとズルくない?」

 ズルいのはお前だよ、と言ってやりたいが我慢する。
 今しがた分かったのだが、『プログレス』がハックの補助にだいぶ向いていた。

 ──『リアクトミー』。

 指定した五感で、周囲に自分を強制的に知覚させるという……一般的にはハズレとされている能力だ。

 しかし、なんというご都合主義。
 三つで知覚させるだけで他者を殺すことができる、そんな力が存在した。

「姿を見せて視覚、話しかけて聴覚、あとは触覚か嗅覚か味覚。本当は触れて触覚を満たすのが普通なんだろうけど……そこでその能力を使えば、距離を取っても使えるようになるわけだ……チートすぎだろ」

「抵抗とかあるんだぜ? だから強者には全然効かないんだが……マスター、ずっと成功しているぞ?」

「……体は弱いんだよ」

 職業能力で強化はしているが、抵抗に関しては特に変化はない。
 ……『死天』は死ぬことでアイテムを作り上げるので、阻害したくないからな。


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