虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

霊子変換室 その07



 万物破壊能力+破壊比例の性能強化=超絶チート……なんて方程式を生み出したしまった、キーシと『プログレス』のシナジー。

 権能を持つ『超越者』の使用は禁止していたが、それに準ずる能力を有する『天』たちに関しては何もしていなかった。

 なぜならば、それをしてしまうとルリや子供たちが『プログレス』を使えなくなる。
 非常に優秀なうちの家族たちは、全員が休人で七人しかいない『天』の持ち主なのだ。

 なので、こんな事態を生み出してしまう。
 俺だけはそんな『天』を四つも保有しているのに、『生者』という『超越者』でもあるので『プログレス』が使えないがな。 

「──『マルチプルセンサー』起動」

「なんだ、それがリーダーのプログレスなのか? 壊せないタイプかよ……」

「捕捉完了──『轢殺の車輪』」

「おいおい、急に車輪が出てきたぞ!」

 対象を指定して、どこまでも追いかけてくる車輪を放つ『死天』のアイテム。
 領域内の完全感知を行える『プログレス』によって、三人全員を捉えた。

「他二人、隠れていてもこれは強引に暴き出して轢き殺しに来るぞ。嫌ならさっさと対処するんだな」

「──チッ、『グランドマロット』」

「じゃあ、よろしく~」

「……まあいい──“火球ファイアボール”」

 無詠唱で放たれたのは火の玉を生み出す魔法……のはずなのだが、それと同じくして異なる魔法が発動している。

 凄まじい業火、ゲーム的に言えば最下級の魔法と最上級の魔法ぐらいに差がある火力。
 感知圏内だから分かるが、全然魔力は減少していないのに発動していた。

《『グランドマロット』、その効果は魔法の連鎖を可能とする道化の杖です。ただし、連鎖できる魔法は自身の使えない魔法のみ。その代わり、その魔法で消費する魔力は、連鎖する際に用いた魔法の魔力となります》

「なるほどな、そういうことか。まあ、タネさえ分かれば──『タブースペルズ』」

「っ……そのプログレスは!」

「やっぱり、もうウワサになってたか。結構やばいよなこれ──“スペルドロー”」

 空間に作用する『プログレス』から、今度は巻物の形をした『プログレス』へ。
 能力を行使すると、独りでに封が解かれた巻物から魔法陣が浮かび上がる。

「よっしゃあ、当たりが来た!」

「……“新星命爆ビックバン”か」

「なんだよローグ、あのデッカイの」

「使ったヤツごと爆発する、要するに自爆技だ。ただし、その威力がとんでもないから禁忌に指定されたものだがな。止める方法は二つ、どうにか壊すか……術者を殺すかだ」

 至ってシンプルな攻略方法。
 キーシが居る以上、どちらを行うことも可能ではある……さて、どちらを選ぶ?


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