虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

霊子変換室 その06



 掌握も順調に進み、霊子変換室を調べ上げるまでもう間もなくといったところ。
 ハッキングを終えたら、そのシステムを使い【情報王】の侵入を一時的に封じる。

 その他休人も抑えられるが、死に戻りすると情報がリセットされるので、どうせ無駄になるだろう。

「そろそろ終わるけど……マジか、このタイミングでコイツらとは」

「──おっ、リーダーじゃねぇか。こんなところで何してんだ?」

「マスターじゃん。えっ、もしかしてウワサの防衛システムって……」

「俺だよ。ちょいと事情があってな、今回ばかりは譲れないんだよ……悪いけど、そのまま回れ右してくれないか?」

 現れたのは、『破天』のキーシ、『死天』のハックのダブル裏『天』の持ち主。
 そして──

「お前もかよ、ローム」

「……ツクル。いや、事情は何も聞くまい。だが一つだけ聞くぞ……このクソッたれな組み合わせは、お前の仕業か?」

「半分正解。一番最後に一番強い奴らを揃えていたんだが、思いのほか強すぎたな。三人で限界だって、予測されたみたいだ」

 ローム、またの名を『魔天』。
 全休人の中でもっとも魔法に長けた、運営が認めし魔法最強である。

 彼らは共に、かつて俺やルリやタクマがプレイしていたオンゲーをプレイしていた。
 いっしょにプレイすることも多く、いろんなことを経験したな。

「誰も通す気はない。むしろ、金を出すから引き返してほしい……ダメか?」

「ガハハハッ! リーダー、お前何言ってんだよ! 邪魔があるならぶっ潰す、文句があるならぶっ潰せ! もう忘れたのか?」

「おれはそれでもいいけど……せっかくなんだし、マスターのこっちでの実力を改めて見せてほしいぜ!」

「……そういうわけだ。俺もそれは気になるから、全力で戦わせてもらう。やる気が出せるように、お前が負けたらその奥にはちゃんと行ってきてやるよ」

 どいつもこいつも、元上司の言うことを聞かない奴らだ。
 ……まあいい、そんな奴らといっしょだったからこそ、ランダムプレイも楽しめた。

「じゃあ、先手必勝──『地裂脚』!」

「うわっ、ズリィ! なら、俺もやってやるぜ──『ブレイクグローブ』!」

 三人相手に正攻法で挑んでも勝てないだろうし、初手から潰す気で使った『地裂脚』。
 しかしそれは、キーシが起動させたグローブ型の『プログレス』が防ぐ。

 凄まじい速度で生まれる地割れに、拳をぶつけるだけ。
 さながら幻想を殺すかのように、現象は消え失せて地割れが止まる。

「これが俺のプログレスだぜ! 壊せば壊すほど強くなる! さぁ、どんどん壊すモノを持って来いよ!」

 ……壊せないものが無い『破天』に、壊せば壊すほど強くなる武装。
 なんというベストマッチ、チートの権化みたいな組み合わせじゃねぇか!


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