虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布中篇 その20



 中立域

「おいおい、どうなってんだよ!」

「……いや、何が?」

「何がって、やっぱりお前のせいだろ! 前からウワサになってたけど、【情報王】が動いたのはお前が関わったからだよな!?」

 最後に情報を集めるべく、タクマの下を訪れれば……いきなり怒鳴り散らされた。
 言われる前からなんとなく分かっていたのだが、やっぱりという感じがする。

「その前々からってのは、なんだ?」

「未知のエリア開拓を目的に、休人たちを集めていた。報酬も破格だから、大部分の奴らは参加している。ここに来る有名な奴は、ほとんど受けてるな……お前の関係者はゼロだけど。それでも、実力者ばっかりだ」

「ふーん……まあ、ルリと子供たちが居ないなら全力で阻止できるからいいけど」

「阻止ってことは、何か問題があるのか?」

 タクマには、第三の街である『案役街』の詳細を説明していなかった。
 なので今回、そのことに関する話をしておくことに。

「──というわけで、あそこは行くとこの街とかすべてを支配できる中枢区画。アイツが支配すると、間違いなくロクでもないことが起きるわけだ」

「マジか……これ、伝えた方がいいか?」

「いや、このままでいい。【情報王】のことだから、対策もしているだろう。俺の方もその問題自体は、【革命英雄】のところで聞いて把握はしていた。そっちは俺が防衛するから、気にしなくていい」

「……お前、何を企んでる?」

 長い付き合いのタクマなので、俺が打算もなしで協力しないことは分かっている。
 そりゃあ当然、目的があるからこそ英雄様の蛮行に協力するわけだ。

「『プログレス』は魔石での成長を主な方法にしているが、他にも存在する。本人のパーソナルから生まれたんだ、使うたびに流れ込む魔力だって同時に糧にしているんだ」

「……なるほどな、こういう戦いだからこそ促される成長もあるってことか。問題は、お前がそれだけの戦力を用意できるかって話だが……大丈夫なのか?」

「俺は支援だけのつもりだが、少なくとも阻止だけなら絶対に維持できる。そんな未来永劫壊せない壁の前に……さてさて、どんな抗いを見せてくれるのやら」

「クソ野郎だな、おい」

 ずいぶんな言いようである。
 いろんな情報を糧として、『プログレス』は多様な進化を遂げていく。

 今回の場合、単純な力ではなく特殊な能力に目覚めてくれる可能性が高い。
 どうやら『SEBAS』によると、何か強い要因があればその可能性は上がるそうだ。

「──俺のことを隠すなら、専属の情報屋として連れていくけど、どうだ?」

「──お前は最高の相棒だぜ! どこまでだろうと、お供させてもらいます!」

 なんて会話をしたのち、俺たちは闇厄街へ向かう。
 目指すのは──案役街への入り口。


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