虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布中篇 その15



 闇厄街

 とりあえず、一度目の訪問で出会っただいたいの奴らには会った。
 まだ居るのだが……イベント的に、もう少し後の方がいいだろう。

「しかしまあ、ずいぶんと綺麗になっているなぁ……さすがは【革命英雄】」

 生活に関する革命まで、しっかりとこなせる職業だったとは……。
 いくら俺がアイテムを提供しているとはいえ、それでもここまで変わるとは。

 分かりやすいたとえを挙げると──物凄いスラムの状態から、少なくとも糞尿やゴミが道に落ちていない状態に変化した、と言った感じだろうか?

「さて、あの人たちはどこに……あの頃と今とじゃ、全然状況が違うからな」

 最初の出会いはたしか、あっちが俺を事前に『超越者』だと分かって近づいてきた。
 まあ、そのときははぐらかして誤魔化すことができたんだが……それが出会いだ。

 今の【革命英雄】たちは、俺を必要としていないので呼ばれることもない。
 なので探しているわけもなく……どこからか、強者の反応がするのも気のせいだろう。

『──者』!』

「仕方ない、一度帰ることにしますか」

『──い、聞いているのか!?』

「……さて、行きますか」

 悠々と歩いていた俺なのだが、突如背中に強い衝撃……を受ける寸前に死に戻り、体を何かが通過する。

 死に方を調整し、わざと狙ったのだが……うん、相変わらずだな。
 その職業に合わない「ふぎゃっ!」という声が響き、多くの人々が転んだ者の近くへ。

「──マリア様!」

 彼女こそが、【革命英雄】にして闇厄街の人々にとっての救世主の片割れ。
 そんな彼女は現在、救った民たちに物凄く心配されていた。

「だ、大丈夫だ……それよりも、この男を拘束しろ!」

「やれやれ、急にそのように人々をけしかけてくるとは……どういった心境の変化で?」

「君が、いつまで経ってもこちらの呼びかけに答えないから仕方なく……コホンッ。ともかく、久しぶりだな『生者』」

「ええ、お久しぶりです。とりあえず……これ、解いてもらえますか?」

 挨拶をしたのはいいのだが、周囲には俺を捕縛する男たちが。
 せめて女性なら……嗚呼、ルリ、誤解だから勘弁してくれ! 

「……急にどうした?」

「いえ、女神に祈りを捧げていただけです。それよりも、ご用件を聞きましょう」

「…………ここではなんだ、場所を変えることにしよう」

 なんてこともあり、俺と【革命英雄】は彼女を慕う人々から離れて、彼女の使っている建物に移動する。

 ──かつて普通サイズだったそこは、少しばかり大きな屋敷となっていた。


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