虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布中篇 その13



 ──『プライベートアイ』。

 これこそが、【情報王】が発現させている『プログレス』の能力である。
 詳細を省いて要してしまえば──隠密特化な監視網、といった感じだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「お久しぶりですね、【情報王】さん」

「……貴様か。何の用だ」

「ははっ、そう冷たくしないでくださいよ。気に入っていただけているのでしょう、私の携わった『プログレス』は?」

 さて、場所は変わって情報ギルドの最上階である。
 いきなり転移をして訪れたのは、向こう側からコンタクトを取っていたからだ。

 先ほど挙げた『プライベートアイ』、彼の眼となる球体が俺の周囲を探っていた。
 なので今回、回りくどい手順を省いてここに来たのだ。

「……ああ、非常に使い勝手がいい。前回の強奪、そこに目を瞑ってやるぐらいにはな」

「はて、何のことでしょうか?」

「……まあいい。あれから星渡りの民どもが情報を献上し、こちらも準備は万全だ。今さら貴様程度に、何ができるわけでもない」

「そうですか。何のことだかさっぱりではありますが、おめでとうございます」

 前回、つまり最初にここを訪れたとき、俺は【情報王】が集めた膨大な情報を根こそぎ奪い去った。

 それを未だに忘れられないのか、情報を牛耳るのが大好きな【情報王】は、まだ俺のことを恨んでいたようだ。

「ちなみにとある『プログレス』ですが」

「……なんだ、急に」

「視界を共有できる能力がございまして、そこに鑑定や魔眼といった視認系のスキルを重ねて使うことができるのです。眼の数だけ行使できる以上、通常では暴くことのできないものも……より深く、知れますね」

「──くどいな。予想はしていたが、やはりプログレスに関する情報はすべて貴様が徴収していたか。なるほど、なかなかに考えられたシステムではないか。誰もが依存し、固執する……自分だけの力、というやつだ」

 休人ならば誰でも強くなれるツールで、こちらの人々にとっては休人の使う便利なシステムを使うことができる魔道具。

 認識にやや差があるものの、どちらも好意的に受け入れていることだろう。
 なんせ、誰でも使えるのだから、一部の者に不利があるわけではないのだから。

「目的は問わんがな。それについては、ここの中枢を掌握してしまえば分かることだ」

「……あのコンピューターの本体が、この街に眠っているからですか?」

「隠す必要もないか。そう、この星のすべてがここに眠る。それを統べたとき、それがすべてが始まる時だ」

 ここで豆知識、解析や対人系スキルへの補正効果がある【情報王】なのだが、その本質はやはり集めた情報にある。

 ──集めた情報量に応じて、常時発動する強化バフ。

 それが世界丸々一つ分ともなれば、それはまさに最強と呼べるのではないだろうか。


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