虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレス配布中篇 その07
暗躍街 中立域
ここにはよく、タクマから情報を聞くために足を踏み入れている。
この街を支配する複数の支配者たちも、表向きにはこの場所に手を出さない。
「……で、お前が来たこのタイミングで本当に揉め事が発生したわけだ」
「それ、俺のせいか?」
「知らねぇよ。ただなぁ、実際にこんな事態になってるんじゃねぇか」
中立域を支配する……とか、そういうことはまだ起きていない。
今回、何が起きるのかというと──これからを決める会議だそうだ。
開催まではまだしばらく掛かるそうだが、それによって少々空気が悪くなっている。
諍いなども発生しており、それが事前の牽制だとか言われているんだとか。
「それで、どこから行くんだよ。たぶん、それも今回は結構関わってくるぞ」
「とは言ってもな……俺ってそもそも、全員の場所に行ったことがあるわけじゃない。気づいて接触してきた、もしくは俺が目的を持ち会いに行った奴だけだよ」
「その数がひどいんだ。『拳王』や『賭博』ならともかく、【情報王】はホログラム越しだし【奴隷王】なんか会ったら最後、次の瞬間には奴隷になってんだぞ?」
「あー、あの人とはいちおうの保険として、奴隷化とかしてくるからな。俺は奴隷化の負担に耐えられなくて死ぬから、それをやられても全然気にならないんだが」
お陰様で、『死天』製のアイテムを得られたし、何も文句は言わない。
ちなみに隷属の度合いを調整できるので、相手は基本的に気づけないそうだ。
本格的に逆らえなくなるならともかく、嘘が吐けない……ぐらいだと隠せるらしい。
「あとは【革命英雄】と『薬毒』か? アイツらは会うことはできるらしいな……どっちも死にかけが条件らしいけど」
「前者は貧困層を救っているからで、後者は病人を救っているからだろ。ボランティア活動をしてるんだし、それに真面目についていきたいとか言ったら、たぶん受け入れてくれると思うぞ」
「……休人がいろいろやらかしてるって知られてるからな。英雄様の方は、ログアウトする俺たちに期待はしてねぇらしいぞ」
「まあ、よく待たせたりしてたっけ?」
時間の流れが違うし、[ログアウト]してから再ログインをするまでに時間を要する。
俺は社会人なので、EHOをやる時間もある程度限られてしまう。
前に共に居た時も、それで待たせることが多かった気がする。
こういう部分もまた、彼らと付き合う際には不便な点だな。
「で、お前は結局どこから行くんだ?」
「その話、まだ終わってなかったんだ」
「当たり前だろ。早く言え、根回しする必要があるんだから」
「そうだな、俺が行くのは……」
この後タクマにそれを告げ、俺はこの場から離れる。
……うん、しっかりと付いてきているな。
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