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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布中篇 その06



「……これは」

「なかなか似合っているぞ……ぷっ」

「う、うむ……意外とイケるのじゃ」

「狐魅童子様まで!?」

 俺とコミが笑うのは、千苦の現状に関するもの──体の上に咲いた花についてだ。
 なんというか非常にシュールである、コミも笑っているので千苦は怒れない。

「さっきコミにも説明したが、この能力は基本的に自分用だ。だが、ある条件を満たした場合は他者にも使うことができる……これはたぶん、コミが他の奴を思いやれる優しさがあるからこそだな」

「当たり前だ。狐魅童子様は、我らをいつも支えてくださる。ゆえに我らもまた、それに応えようと励むのだ」

「……言われた本人が物凄く照れているぞ。とにかく、『ブルームセンス』の場合、他者に能力で咲かせた花を付与することで、自分の能力の一部を分け与えられる。今はまだ一種類だけだが、いずれ複数も可能になるな」

 赤や青など、異なる色の花で開花する潜在能力に差があるようだが。
 今回は白色の花──効果は能力昇華、要するに持つスキルなどが強くなる。

 説明した通り、コミ自身はそれらすべてを同時に使うのと同等の補正を受けている。
 また、自分に花を咲かせることもできるようなので、二重で強化できるようだ。

「まあ、力を籠めれば相応の大きさの花が咲いて補正幅も上がるみたいだ。コミの燃費を考えて、少しずつ使っていけばレベルも挙げられていくだろう。あっ、魔石を使うのも忘れるなよ」

「大丈夫なのじゃ。魔石を落とす魔物は、この異界にも生息して居る」

「なら、大丈夫か。最悪、俺が別世界から輸入して儲けようとも思っていたんだが……欲しい魔石があったら、言ってくれよ。ここの魔物だけじゃ育てられない場合もあるから、そのときは物々交換でもしよう」

 コミが魔石で行う強化をやれば、花の種類や同時開花数などを調整できそうだ。
 他にも既存の花の増加、他には彼女自身への強化の度合いとかも変えられるだろう。

 ただし、それはそれに該当する魔石が存在すれば、の話である。
 メカドラは経験値さえあればできるが、劣化版である『プログレス』には魔石が必須。

 魔石にはその存在の生涯が刻まれ、それを糧とし『プログレス』は能力を変質させる。
 進化だったり強化だったり、だが魔石はその個体に関係する変質しかさせられない。

「うむ、民たちも得るであろうプログレスに合った魔石があれば、ぜひとも頼む」

「それはそいつらの適性によるが……まあ、魔石はいろいろと持ってくる予定だ」

 そんな会話をした後、俺は暗躍街へ向けて転移を行う。
 ……なんだか、今回も厄介ごとに巻き込まれる気がするんだよな。


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