虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレス配布中篇 その03
「──プログレス、凄い人気だよな」
「……急にどうした?」
「いや、急にも何もないだろ。自分だけの力なんてパワーワードだぞ、少なくともEHOプレイヤーの中じゃ流行大賞間違いなしな人気っぷりだ」
「そうなのか」
情報通、というか情報屋プレイをしている拓真からいつものように話を聞く。
EHOのランダムプレイの結果、どうにも世間から離れた場所で活動しているからな。
「ある程度カテゴリーの法則性とかが発見されているし、プログレスの情報は高く売買されてる。本当、製作者様々だよ……」
「じゃあ、金でも貢ぐか?」
「いや、そいつはバカ高い情報ばっかり買いに来るから何もしない」
拓真は優秀なので、なかなか知り得ることのできない情報を獲得していた。
レベル999特典の情報開示も、完全では無かったので買いたい情報はたくさんある。
特にシステム的なこと以外、情勢などは全然分からないからな。
休人がどこまで踏破したとか、そういう情報も買っています。
「しかしまあ、EHOも凄いよな。個人で開発したアイテムを、アップデートで追加したみたいに振る舞ってさ……そこんとこ、どう思ってるんだ?」
「まあ、普通に感謝だよ。交渉自体は別の方に頼んだんだが、互いに利益のある話だったからな。先方も、高評価だったらしいし」
「……まあ、俺は儲かってるからいいけど。何もツッコまんぞ、厄介そうだし」
「失礼な。人のことを何だと思ってやがる」
常識破壊爆弾、と答える拓真に少々イラついたものの、深呼吸してどうにか抑える。
「ところで、最近のお前って何してんだ? 全然こっちに来ないってことは、例の場所に引き籠もってんのか?」
「いや、お世話になった人の所に行って、直接『プログレス』を売ってる。最近は、なぜか『辻斬』といっしょに妖刀を作ってた」
「……本当、お前って何でもありだよな。バグとか小ネタとか、そういう見つけづらいヤツをすぐ見つける」
「その言い方もどうかと思うけど、アレはいろいろとあったからな。まあ、今は妖怪たちの住む世界で、『プログレス』を売ってる」
なんでだよ! とツッコんでしまった拓真が、俺を恨めし気な目で睨んできた。
いやいや、自分で勝手にツッコんだんだろうに……俺は悪くない。
「それで、まさかこっちには来ないよな? なんかそう聞くだけで、フラグっぽくなると分かる俺がいる」
「いや、何を言ってんだよ。まあ、たしかに行く予定ではあるな。『拳王』、『賭博』、『薬毒』、【情報王】、【革命英雄】、【奴隷王】とかにも同じことをしに行くからな」
「……聞いただけで面倒事のオンパレードなラインナップだな」
他にもいろいろと行く場所はあるが、次に行くのは暗躍街のつもりだ。
……しかしまあ、拓真の言う通りまたトラブルが起きそうだ。
どんどん『プログレス』も増えているし、使えそうな物が無いか見ておくかな。
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