虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレス配布中篇 その02
「──なるほど、あの『陰陽師』への対策にもなるのか。それはぜひとも、使わせてもらいたい」
「まあ、どういう力になるのかは千苦次第だがな。今ある力を高めるのか、それとも足りない部分を補うのか。主に分ければその二つだ、祈っても選べないぞ」
「構わない。いずれにせよ、狐魅童子様の御力になれるのであれば」
さすがに【刀王】のように、瞬時の展開はできなかったようで。
一日も経てば起動できる、それまでは待っていることになった。
しかし、問題が一つ──
「なあ……本当にいいのか? 千苦が使うのも、安全性を示すためだぞ」
「大丈夫なのじゃ。それとも、ツクルは私を害す気があったのか?」
「いや、それはない」
「即答じゃな。やはり、私の選択に間違いはない──始めてくれ」
コミは望んだ、『プログレス』の移植を。
取り外し可能なアクセサリータイプではなく、常時接続式の移植型である。
やり方はとても単純で、しかも移植の際に生じる痛みなんかもいっさいない。
千苦も最初は渋っていたが、自分が移植を受けて何も感じなかったので許した。
「それじゃあ、始めるぞ」
「うぅ……」
「──はい、終わりましたっと」
「……本当に、一瞬だったのじゃ」
宝石型のアイテム『プログレス』を、コミの心臓に当てる。
ずぶずぶと宝石が呑み込まれていき、俺が手を放してもそれは続いた。
最後には完全に溶け込み、『プログレス』はコミに取り込まれる。
ちなみに休人の場合は、それを初期状態でカッコイイ演出と共にやっているそうだ。
「起動後は、休人と同じようなシステムを使うことができる。アイプスルの住民も使えるから、子供たちといつでも連絡できるようになるぞ」
「そうか……それは楽しみなのじゃ」
住民たちにも、移植型かアクセサリータイプの『プログレス』を付けてもらった。
能力的な部分を無視しても、誰でも使える通信機能と言うのは便利だからな。
俺の行ったことのある場所に限り、その通信機能が使える。
つまり、使いたければ俺の通行を許可しろと脅しているわけだ。
情報の漏洩を気にする奴もいるだろうし、それを防ごうとするヤツも現れるだろう。
まあ、自由にしてもらいたい……ただし、解析をしようとする奴だけは認めないがな。
「一日はツクルも滞在するのじゃったな。千苦、もてなしの準備を」
「いや、悪いがそろそろ自分の世界に帰らないといけなくてな。二、三日ほどしたら、戻る予定だ」
「そうか……残念じゃな。しかし、ならば能力を楽しみにさせることができるか」
「そういうことだ。楽しみにしているぞ」
なんて会話をしてから、[ログアウト]でこの場を去る。
……さて、次に会うときにどんな力を目覚めさせているのやら。
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