虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布中篇 その01



 妖界

 先ほどまでいた倭島と同じ座標に在りながら、異なる場所であるこの世界。
 物ノ怪と呼ばれる日本で言うところの妖怪たちが、この世界には数多く住んでいる。

「……ここなら、一息吐けるよ」

 俺が転移した場所は、鳥居が無数に並んだ神社である。
 その鳥居は神代魔道具と呼ばれる代物で、この世界と別世界を繋ぐ門の役割を持つ。

 俺が直すまではだいぶボロボロで、世界を繋ぐ道がひどい状態で生成されていた。
 それをどうにか修復することで、世界間を誰でも渡れるように俺がしたわけだ。

 ……まあ、ある程度条件的なモノはここの主といっしょに設けたので、戦争用とかには使えないんだけどな。

 なんてことを思ったからだろう。
 神社の奥から、死亡レーダーがガンガン反応する強さを持つ者が近づいてくる。

 悪意とか殺意が無くとも、俺が勝手に死ぬからこそ使えるこの探知方法。
 隠蔽とか使っていようと分かるので、どっきりとかには使えないんだよな。

「なんだ、迎えに来てくれたのか?」

「……むぅ、せっかくの『さぷらいず』が台無しなのじゃ」

「悪い悪い、けどまあ、かくれんぼでそれができるってのは見せただろう? どれだけ隠れても、隠れようという意志が外に漏れるだけで俺には分かるんだよ」

「はあ……『超越者』は誰も彼も、異様な力の持ち主なのじゃ」

 狐耳のじゃロリ鬼娘(巫女)という、てんこ盛りな属性を持つ少女。
 彼女こそが妖界の主、狐魅童子ことコミであった。

「ところで、他の奴らは? 千苦とかにも会いたかったんだが……」

「千苦であれば、今は仕事を頼んでおる。時期に帰ってくるであろう」

「ならいいか。じゃあ、とりあえず……これだな。受け取ってくれるか?」

「これは……なんじゃ?」

 彼女が俺から受け取ったのは、宝石の形をしたアイテム。
 天に透かしているのだが、光が反射してキラキラと光っている。

「それは『プログレス』。『超越者』と使役されている奴以外は誰でも使える、自分だけの能力を作るアイテムってところか?」

「どういうことなのじゃ?」

「それは……ああ、ちょうどいい、千苦を交えて説明するとしよう」

「狐魅童子様!? どうして外へ……! 貴様は……なぜここに」

 突如、空から降ってきた巨大な黒鬼。
 その風圧は上手い具合にコミだけを避け、逆に俺を的確に吹き飛ばしていく。

 それが収まったとき、飛んできた黒鬼は彼女に跪きながらこちらを見ていた。
 俺は体をパンパンと叩き、死に戻りすることで身を綺麗にしてから元の場所に戻る。

「久しぶりだな、千苦。さっそくで悪いが、これの実験台になってくれ」

「それは構わないが……なぜだ?」

「さすがの即答。コミも使うから、身の安全の確保をするためだ」

 そういうと、さっそく『プログレス』を装着した千苦。
 彼らは『超越者』ではないので、千苦の起動は成功した……さて、どうなるのやら。


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