虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
辻斬談(01)
「……さて、これから何をするべきか」
ツクルと別れ、『辻斬』の少女は考える。
私怨による復讐を終え、新たなる目標を定めることができた。
しかし、その道ははるか遠く……何を成せばいいのか、まだ決まっていない。
「『生者』殿の技は、師匠……お爺様より上であった。真なる妖刀を目指すためには、アレを上回らねばならぬわけか」
共に打ち上げた妖刀[支揮咬]を眺め、思い出す……ツクルの鍛冶の技量。
彼女は知らないが、:DIY:スキルを持つ彼に生みだせない物は存在しない。
神と同格、いやそれ以上の技術。
それを見た『辻斬』は、自身の師である祖父を思い出していた。
「──【鍛神】であるお爺様を超える。それが何を意味するのか、『生者』殿は理解しているのだろうか?」
自身に戦闘の才能が無いことは、己自身がよく理解している。
しかし今回、ツクルは『辻斬』の才能を限界まで引き出し『陰陽師』に刃を届かせた。
いちおう、『辻斬』の権能が底を上げていたので可能性はあったのだ。
だが彼女にはそれを引き出す適性が欠けており、長い年月を費やす必要があった。
そんな時間の壁を嘲笑うように、ツクルはその才を昇華させる。
それを成したは一本の妖刀、[最敵]の銘が与えられた至高の一振り。
「お爺様でも、そのようなモノを打ち上げることはできなかった。『天地を裂くことも、世界を支配することができるモノを生み出せようと……人を、高みへ導くことはできぬ』とお爺様は言っていた」
かつて告げられた【鍛神】の言葉。
それはどれだけ優れた武具を生みだそうとも、人自体に作用することができない……そう語っている。
故に焦がれ、目指した。
神の名を冠した職業に至ろうと、それはまだ叶わずにいる。
握り締めた使い手が、武具の力を振るうことで得られるものはなんなのか。
それは自信であり、自覚であり、自負である……己に関するものを、改める。
実際、武具は力を補う。
しかしそれは仮初の力、装備が手元から離れればその力は失われる。
「だが、某の技量はたしかに上がった。今もなお……それはスキルが証明している」
あるときを境に、まったく伸びなくなった武術系のスキルのレベルが上がった。
スキル制が導入されているこの世界だからこそ、知ることのできる限界の突破。
「『生者』殿に負けぬ妖刀となれば、何かの壁を超えたい。しかし……さて、どうすればよいのやら」
ふと、ツクルが渡した宝石を見る。
効果は刀剣を保存するというものだが、そこに変化を起こすのは自分自身、そう言われていた。
「……お爺様に、見てもらおう」
もう一つ、見てもらいたい物もあるのだからな。
渡されていた『収納袋』の中身、それを見た祖父のことを思う『辻斬』なのだった。
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