虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陰陽師問題 その18
「さて、『陰陽師』さんからの依頼も無事達成しましたし……そろそろ報酬の方を、頂こうかと」
「『生者』はん。あんさんは『辻斬』はんのお手伝いをしたんやろ? どの口がそんなこと言い張るん?」
「何を仰いますか。私が受けた依頼は、ここに来るお方は……つまり『辻斬』さんをどうにかするというもの。ですので、このように鎮静化しましたよ。『辻斬』さんも、これ以上は何かしようとは思っていませんね?」
「うむ。ただ……この女が今一度、約束を違うのであれば別ではあるがな」
物騒な発言、そしてカチャリと音を鳴らす妖刀が『陰陽師』を脅す。
彼女もそれを理解しているのか、やや緊張した表情を浮かべている。
「……冗談や、冗談。『生者』はん、約束のもんはもう用意してはるよ」
「なんだ、そうでしたか。いやー、相変わらず『陰陽師』さんは冗談がお上手ですねー」
「うふふふっ……」
「あははははっ!」
互いに顔で笑い、心で複雑な想いを吐露する俺たち。
少なくとも『陰陽師』は、よくもやってくれたなぁ……みたいな感じである。
◆ □ ◆ □ ◆
「──では、再び山籠もりを?」
「うむ。貴殿に負けぬよう精進し、最高の逸品を真っ新な心で目指してみようと思う」
「なるほど……頑張ってくださいね」
報酬を『陰陽師』から貰い、都から追い出されると、『辻斬』ともお別れだ。
まだまだ『プログレス』を配る相手は居るので、俺は再びそれを行っていく。
思えば知人もだいぶ増えた……その分、こういったやり取りも増えていた。
感覚的にはアレだな、お中元とかそういう感じ……配っている物はだいぶ凄いけど。
「『辻斬』さん、これ……ご自身で使うことはできませんが、連絡手段として使うことはできます。それに、あのときと同じように組み込むこともできるでしょう」
「かたじけない。しかし……またなんとも面妖な代物を」
「入れた能力は『ソードホルダー』。許可を取りましたので、【刀王】さんのものを使わせてもらいました」
「なんと、彼の【刀王】の!?」
特訓中に聞いたのだが、刀を物としてではなく武器として集める【刀王】のことは、好ましく思っているらしい。
ただ集めて保存するのではなく、あの人はしっかりと使っている。
それが刀剣ということもあり、一方的にではあるが知っていたらしい。
「組み込むことで、生みだされた妖刀には刀剣の収集機能が発現するでしょう。そして、それをどう生かすのかは……『辻斬』さんにお任せします」
「重ね重ね、なんとお礼を申せば……」
「いえいえ、こちらとしてもぜひともその変化を見せていただきたい。ですので、完成した暁にはご一報ください」
「うむ、相分かった」
妖気がもたらす『プログレス』の変化。
それもまた、立派な題材として調べる価値があるからな。
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