虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

陰陽師問題 その14



「ふむふむ、復讐か……二回目以降、主を訪れる者たちの中で、二番目に多い理由じゃ」

「あっ、やはりそうでしたか」

「じゃが、今回のモノはとてもまともじゃ。普段であれば、主の言動や振る舞いが原因の場合が多いのじゃが……ふむ、『辻斬』のお手伝いをすべきじゃろうか」

「大丈夫ですよ。刀技の腕も上がるようにお手伝いしましたが、それ以外にも少しばかり提供をいたしましたので」

 いろいろあって、『陰陽師』が少々有利になっていた情況で。
 俺が渡した秘策──レア素材で打ち上げた妖刀を、『辻斬』が引き抜く。

「むむむっ。なんじゃ、あの刀は。ずいぶんと禍々しい……それでいて、神々しい力を帯びておるではないか」

「あれは『操刀[支揮咬]』。斬った相手の有する支配・指揮権に干渉します。今回の場合は……まあ、ああなりますね」

「なるほど、それであの主も混乱しておるわけじゃな。言っておくが、似たようなことをした者もいた。じゃが、主の契約の結びつきに敵わず、そのまま敗北していったぞ」

「提供したのはレアな素材。『辻斬』さんに足りていなかったモノ、それは単純に権能を発揮するための媒介でした。そこを補うことができれば、ご覧の通り……少なくとも、対等ぐらいには引き戻すことができます」

 新たな妖刀[支揮咬]を振るい始めると、『辻斬』が『陰陽師』へ近づきやすくなる。
 斬った式神を同士討ちさせたり、その他にも『陰陽師』を攻撃させたりしている。

 これまでは数の力で『陰陽師』が圧倒していたが、その利も失われた。
 補正効果も、活動できなくなった式神からは受けられないので……弱体化していく。

「主も少しずつ衰えている……むっ、これはなんとも!」

「やはり、ですか──この和菓子、とても気に入ってもらえそうだと思っていましたよ」

「この餡、ただの餡では無いな!」

「特殊な環境で栽培した、最上級の豆から作りました。それを一から餡子にして、この饅頭はできあがりました。他にも羊羹などを用意してありますので、他の方々もぜひ」

 一火が毒見……もとい、実験だ……いじゃなくて味見をしたうえで、他の式神少女たちも新たな和菓子を食べ始める。

 この役はじゃんけんで決めていたのだが、すぐさま他の少女たちも手を伸ばしていく。

「……そろそろ、決着がつきますか」

「妾たちは無論、主が勝つと信じている。当然、『生者』も『辻斬』が勝つと信じておるのじゃろう?」

「あっ、いえ、私は別に。勝敗を絶対に付ける必要があるわけでもありませんし、別の場所に落ち着いてもいいと思いますよ」

『?』

 まあ、復讐の内容が内容なので、そこを解決できればすっきりするはずだ。
 だからこそ、俺も『辻斬』に協力したんだからな。


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