虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陰陽師問題 その13
和菓子と洋菓子、そしてお茶を用意しての試合観戦。
相対する『陰陽師』と『辻斬』の攻防を、俺と『陰陽師』の式神たちは眺めている。
「『陰陽師』さん、なかなかやりますね」
「本来、式神との契約者には相応の恩恵があるのじゃ。その分、数に制限があるのじゃがな……つまりはそういうことじゃ」
「無制限に契約しているからこそ、ありとあらゆる部分で補正が掛かっていると。無制限系の権能は、そういう部分が厄介です」
「『生者』の復活もまた、それに準ずる権能じゃろうに。のぅ、それよりもその……この『けぇき』とやらをもう少し貰えぬか?」
本来、魔法使いタイプの『陰陽師』が武闘派生産職な『辻斬』に勝つことはできない。
しかし彼女は今、武器型の式神を振り回して『辻斬』と斬り合っている。
契約によって補正を受ける、そういう契約も存在するとは聞いていた。
ただ、マイのような【調教師】ではなく、【召喚士】タイプの契約らしいが。
魔力と触媒を用い、契約をするこのタイプなので、魔力を支払えば恩恵があるのだ。
普通は魔力不足で契約できなくなるが……うん、そこは『陰陽師』が何かしているな。
「ケーキですか。味はどうされますか?」
「しょーと、ちょこ、ちーずと食べたが、どれも美味しかったのじゃ」
「他にも亜種としてモンブランやタルト、アイスケーキなどもございますよ」
「なんと、そのような……名前を聞くだけでも、美味だと分かるのぅ」
情報をくれたら寄越す、と言ったらあっさりと承諾してくれた。
まあ、彼女たち自身のことだけに絞ったからこそだな……今は。
ちなみに今は大量の妖術攻撃を式神にさせつつ、『陰陽師』が時間を稼いでいる。
どうにかしようと妖刀を使い、『辻斬』は奥へ突き進もうと刀を振るっていた。
「皆さんは今の環境に満足していますか?」
「うむ。やり口はどうあれ、現状に不満を抱く者はおらんよ。主はそういった配慮は、欠かさずに行うからのぅ」
「そうなんですか……意外ですね」
「そう思われても仕方ない。それでも、主は妾たちにとって、使えるに足るお方じゃ」
対戦中の二人は、何やら急に口論をし始めた……おやおや、急にどうしたんだか。
怒り気味な『陰陽師』、それを笑い少しだけ怒気が減った『辻斬』。
情況がコロコロ変わるなく、ただ一つ変わらない温さがあるのが俺と式神たちのお菓子パーティーである。
「ところで、『生者』と彼の『辻斬』が共に来た理由は何なのじゃ?」
「ええ、せっかくですしお教えしますよ」
また二人の感情に変化が生じているが……さて、いったいなんでなんだか。
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