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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

陰陽師問題 その12



「八倶、これは解けるのか?」

「……無理」

「八倶でもお手上げとは……『生者』は本当に、何でもありじゃな」

 キューブをつんつんと触れながら問う一火に対し、八倶は答える。
 専用の方法で無ければ解けないのが、まだまだ改善すべき点だろう。

「それにしても、先の転移。それが『生者』の持ってきた力とやらうか?」

「端的に言えば、そうですね。皆さんではご利用できませんが、とても便利です。本来であれば、ぜひともご利用してもらいたいのですが……皆さんはそれ以上の益を、授かっておるのですから不要ですね」

「いや、そうでもないのじゃが……な、なんでもないぞ!」

 一火の体がビクッとしたのだが、おそらく『陰陽師』が干渉したと思われる。
 戦闘中だというのに、よくもまあそんなことに手間を裂くよな。

「それでは、改めて問います……これ以上、戦う気はありますか?」

「……お手上げじゃな。九拿が居るならばともかく、主があの状態では妾たちに勝ち目はあるまいよ」

「一火、それでは!」

「止めよ、四瑠。三稀も八倶も、それでよいじゃろう? 元よりこの戦い、『生者』が持ち込んだもの……しかし、妾たちを引き離すのが目的であって、戦うことは必要としていないじゃろう」

 俺としては戦うのもデータ収集に最適なので、そっちの方でも良かったのだが。
 封印している式神たちも、実は内部で脱出しようと頑張っているのを解析中だ。

 あと、『陰陽師』が遠隔で式神の符を戻そうとしているが、そちらは失敗している。
 キューブの中は隔離空間、呼ばれた程度で出れるようにはなっていないわけだ。

 さて、そんなことを考えている間に一火による説得は進んでいた。
 いつもはボケキャラっぽくとも、やっぱり姉としての風格を持ち合わせているな。

「……分かりました」

「うむ。というわけじゃ、妾たちはもう降参じゃよ。それで……『生者』は今後どうするのじゃ?」

「そうですね、ではお茶菓子など……いや、速いですね」

「早く、早く持ってくるのじゃ!」

 一火だけでなく、他の三人もどこからか机なんかを取り出してスタンバイ。
 ……気のせいか、キューブの方も揺れ動いている気がするな。

「では、倭島産のお茶と和菓子、あとはいくつか洋菓子を用意しておきますね」

「ほ、ほほぉ、ちなみにこれらはどういった物なのじゃ?」

「ケーキとポテトチップス、それらの味違いですね。百を語るよりも、味わってしまった方が速いですよ……ささっ、お茶もありますのでどうぞごゆっくり」

「「「いただきます!」」」「……ます」

 そんなこんなで、お茶会をしながら二人の戦いを見届けることに……。
 うん、遠くから殺気が二つ届いてくるけど気のせいだよな。


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