虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陰陽師問題 その06
「まずは落ち着きましょう」
「……貴様も物ノ怪の類いだったか?」
「いえ、説明が足りませんでしたね。私の冠する権能は『生者』、生き残ることに特化した不死者と認識してください」
「……なるほど、それゆえか」
正直、俺も含めて『超越者=人外』という認識が成立してしまっている。
いくら何でも死に過ぎているし、自分のアバターが異常だと分かっているさ。
……アバターが、だぞ。
決して、俺がじゃないからな。
「死にませんので、諦めていただきたい。私は謝礼のため、『辻斬』さんを通すわけにはいかないのです」
「物欲か……いや、これは某も同じようなものだろう」
「……失礼ですが、理由をお聞きしても。先ほどもお伝えしましたが、言葉で解決できることならばお手伝いできますので」
「その申し出はありがたいが……某が望むのはただ一つ、奴に苦渋をの表情を浮かばせることのみ。『生者』殿には申し訳ないが、その提案は受け入れられぬ」
ほぼ百パーセント、『陰陽師』が悪いんだろうなぁと思ってはいる。
しかしビジネスとは基本、感情に流されて動いてはならないのだ。
「では、一試合いたしませんか?」
「……なんだと?」
「ルールはシンプル、相手に確実な死をもたらすこと。こちらで提供するアイテムの中には、野良試合を可能とする物がございます」
そう言って、さっそくアイテムを出す。
警戒されているが、それは今さらなので気にしない。
「──こちら、『死闘の舞台』と呼ぶアイテムです。互いに了承した条件で戦いを行い、果たされるまで解放されません。いかがですか? ちょうど、『辻斬』さんの持つ御刀であれば、私を殺すことができるでしょうし」
「……承知の上で、か。うむ、相分かったぞ『生者』殿! どうやら貴殿には、取りなすだけの手段があるのだろう。なればこそ、某は想いを託せる器であるか知りたい!」
「ええ、お任せください……と言い切ることはできませんが。せめて、いずれ直接顔を合わせる機会ぐらいは用意するとお約束しますよ……いかがですか?」
「うむ……だが、それらもすべて正しく戦を終えた後の話。あの性悪女狐と違い、貴殿は応えてくれそうだな!」
うーん、だいたいの理由は分かったな。
要するに言動だか行動で『辻斬』を怒らせたうえ、そのまま追い返したからこんな状態になったわけだ。
いろいろとまだ腑に落ちない点もあるが、それは戦えば分かること……うっ、ずいぶんと俺も脳筋思考になってきたような……。
「では、死合おうではないか! 己が命を費やし、自らの研鑽を証明するために!」
「……なるほど」
相性が悪いわけだよ。
絶対『陰陽師』って、こういうバトル物にいそうなキャラ好きじゃなさそうだもん。
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