虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

陰陽師問題 その05



「うわー、よく分かるなー」

 山奥に封じられていた異相空間……それが前回、千苦の封じられていた場所だ。
 しかしながら、そんな場所に『辻斬』を追い込むことなどできず、現実の場所に居る。

 その結果、遠くから見ても足止めを行う式神たちの光景が目に映った。
 大量の弾幕を飛ばし、一時的な硬直スタンなどで止めているようだな。

「それにしても……『辻斬』って権能からして、対人特化のはずだよな? どうしてああも、広域殲滅ができるんだか」

 式神たちは倒されている。
 そのうえで、『陰陽師』が何度も補填をしているからこそこの足止めはできていた。

「権能は解析していた通り、刀と暗殺に関する能力への補正。つまり、権能そのものが射程に関わっているわけじゃない……職業の方も相性が良かったのか?」 

《『白氷』のように三種のシナジーとはいかずとも、二種のシナジーに加えて妖刀が第三の要素として加わっているのでしょう》

「どっちも直接会わないと無理か……仕方ない、あとは死んで覚えていこう」

《畏まりました》

 俺が移動を始めると、式神たちは誘導の仕方を少しずつ変え始める。
 それは俺と『辻斬』を引き合わせるよう、進路を意図的に用意した形だ。

「けどまあ、直接会っても速攻で殺されるだけだからな……最適なヤツ、よろしく」

《畏まりました──『プログレス:ゴーストボディ』を起動いたします》

「それじゃあ、能力行使開始っと」

 宝石を介して起動させた力は、己が身を一時的に霊体と化す能力。
 意外と多い能力だぞ、透明人間とかこういう感じで……と望むからだろうか。

 一時的に肉体という枷から外され、障害物などに邪魔されずに進むことが可能になる。
 ……まあそれでも能力値は変わらないし、移動速度はほとんど変わらないけどな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……何奴だ」

「どうも、同種である『超越者』です」

「……死んだ覚えは無いのだが?」

「ああいえ、忘れておりました──解除」

 辿り着いた山奥は、とても平らな状態に整備されていた。
 至る所に斬撃痕……ということもなく、奇麗さっぱりである。

 それを行ったのが、目の前にいる『辻斬』の仕業なのだろう。
 その腰に提げた妖刀も、ずいぶんと禍々しいし……かなり強そうだ。

「さっそくですが、本題です──『陰陽師』さんとの取引で、ご退場願うことになりました。ご理由があるのでしたら、アポを取り次ぐことになりますが……どうされます?」

「しからば──御免」

 交渉の結果、俺の首がスポーンと飛ぶ。
 そして、その頭を掴み首に載せる……うんうん、物凄く面白い顔をしているな。


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