虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

陰陽師問題 その02



 日本で言うところの京都、平安時代風の建物が並ぶ街を訪れる。
 ここは『陰陽師』の根城、至る所に式神が漂い監視を行っていた。

 俺は転移でそこを訪れる。
 当然、それは察知され……迎えとして既知の式神が送り付けられた。

「久しぶりじゃな、『生者』よ」

「一火さん……お久しぶりです」

「うむうむ、主より話は聞いておる……苦労したようじゃのう」

「いえいえ、それほどでも。あっ、これはつまらないものですが……」

 和服ロリの幼女に『プログレス』を渡す。
 使えないのは分かっているが、それもまたサンプルを取るのに使える。

 使用するために識別するということは、一度その者を調べるということだ。
 合法的にすべてを丸っと解析できるのだから、配っておいて損は無いのである。

「なるほどなるほど、すでに主からも何か貰えたらそのまま自分の物にしてよいと言われている。『生者』よ、大義であ──」

「そんなこと、あのお方は申しておりませんよ? 正確には、『使えるモノならそのまま貰え』ですよ。お久しぶりで、『生者』様」

「お久しぶりですね、四瑠さん。とりあえず四瑠さんにも……こちらを」

「あっ、これはご丁寧に」

 途中で発言を妨害され、唖然とする一火を無視して俺たちは話し出す。
 額から小さな角が生えた、鬼人の少女はそれに気づいてなお、俺と話しているし。

「こ、これ四瑠よ! 妾を差し置いて、この大命に横槍を入れるとは何事だ!」

「……前回も申しましたよね? 一火だけでは心許ない、そう判断したからここに来ただけですよ。では、『生者』様。あのお方の下へご案内いたします」

「むぅう……せ、『生者』よ。そちは妾に付いてくるのだぞ? 決して、四瑠ではなく妾に付いてくるのじゃ!」

「はい、仰せの通りに」

 そう言いつつも、四瑠の方を見れば本当に申し訳なさそうな目でこっちを見てくる。
 代わりにギロリと一火を見るのだが、そっちは胸を張って前に進んでおります。

「式神は符を媒介にした契約によって成立する。つまり、召喚獣であり使役の関係。このままだと、発現は不可だろうな。けど、直接結んでいるんじゃないなら可能なんだよな」

《クローチル様のように、言葉のみでの契約であれば問題ないようですし。条件はおそらく、[ステータス]や[称号]として正式に認識されるような契約を交わしたかどうか、でしょう》

「解消すれば手に入るし、それ以降縛られることはない……けど、すべての被使役対象がそう思っているわけじゃないんだからな。対等なパーティーでと思える奴は、少なくとも効率厨にはいないわけだし」

 間もなく屋敷に着く。
 その間の考察だが、『陰陽師』の式神たちは解放されたいとは願っていないだろう。

 彼女たちは良い環境に居るのだし、全員を見たわけではないが『陰陽師』が彼女なりに式神たちを大切にしているのも分かる。

 ……だからこそ、惜しい。
 どうせなら、『プログレス』を使ってもらいたかったんだよな。


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