虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陰陽師問題 その01
「──なんや、楽しそうやなぁ」
「!」
「……ああ、ついに来てしまいましたか」
「あらら、嫌わてもぅた。にしても、ウチはダメでお侍さんはええのか」
俺と【刀王】との会話に、突如として入り込んだ女性の声。
ずいぶんと久しぶりだが……距離を取っていたこともあり、どうやらお怒りのようだ。
「お久しぶりです──『陰陽師』さん」
「ええ、お久しゅう『生者』はん」
黒髪ロング、十二単を動きやすいように改造した服を纏う純和風の少女。
突如として現れたのだが……死亡レーダーで知っていたので、普通に対応可能できる。
この城の主を差し置いて、俺たちは話す。
その近くで警戒してくれる【刀王】……本当に『陰陽師』を嫌がったからか、その一瞬の間に『プログレス』が起動していた。
「ここは俺の城なんだな……女狐が、いったいどうやって来た」
「なんや、そんな簡単なこと。たまたま、偶然、『生者』はんの気配を感じて、それがお侍さんの場所やった……それだけやよ」
「……帰れ、ここは貴様が居ていい場所ではない」
本来ここは【刀王】の領域、『陰陽師』が常時式紙を展開する領域を超えている。
それでもここに来たのには、何か理由があるのだろうか……まあ、ほぼ分かるが。
「【刀王】様……そろそろ、帰ろうかと」
「『生者』……うむ、分かった」
「というわけですので、後ほどお伺いいたしますね」
「なんや、『生者』はん。いったい、ウチに何の用があるん?」
白々しいと【刀王】が呟く姿に苦笑し、向き合った『陰陽師』に答える。
その手には、宝石型『プログレス』という売り物を見せつけて。
「『プログレス』。『超越者』以外の己の意志で生きる者へ贈る、新たな力です。親しいご友人である『陰陽師』さんにも、ぜひとも贈りたいと考えていましたが……連絡の方法が無いもので、困っていました」
「そういえば……『生者』はんには、渡しておらへんかったなぁ──ウチの陣地で使える通信符や」
「ありがとうございます」
「そう遠くない内に、また会えると期待しておくわ」
そう言って、『陰陽師』は消える。
彼女の居た足元には、一枚の符だけが残っており……それもまた、燃えて灰となった。
「『生者』、行くのか?」
「はい。申し訳ありませんが、あのご様子ですとすぐに行かねば何かありそうで……すでに起動させているようですし、詳細は説明書で確認してみてください」
「……読まねばならぬか」
だいぶ分厚いからな。
刀用に大量購入してくれたので、説明書も厚い方を渡してしまっていた。
まあ、なんとかなるだろう。
そう楽観視して、俺は転移するのだった。
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