虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布前篇 その14



「さて、ロロさんの『プログレス』についてご説明いたしましょう」

「お、お願いします!」

「……どういったものなのだ?」

「識別名は『ハートギア』。常時発動型でして、心臓部分に組み込まれた歯車として機能しております」

 当然、人が使おうとしてもそのまま死んでしまうぞ。
 あくまで素地があるロロに『プログレス』が呼応して、彼女に合わせて誕生したのだ。

「効果は大きく分けて二つです。一つは、機械生命体を生みだす能力。ただし、命令系統が形成されるわけではなく、あくまでも命を生みだすまでが能力ですね」

「ふむ……興味深いな」

「あくまで、ロロさんの意志と機械に応える意思がある必要がございます。何でもかんでも生命体にできるわけではありません……少なくとも、現状では」

「ほぉ、そういうことか」

 それでは命の創造の域に至ってしまう。
 なので条件を設けることで、必要なリソースを抑えているらしい。

「二つ目の能力は、一つ目の能力を前提にした能力です。機械生命体に『プログレス』を移植可能となるものですね。条件は同じく、了承の意志があることです」

「『生者』、プログレスの方だが……」

「はい、後ほどお渡ししますよ。もちろん、相応の対価が頂けましたら」

「分かっている」

 ロロは基本、『機械皇』に従順だ。
 あまりに人の道を外れた命令でもない限りは、彼女もそれに従うことだろう。

 そして、ここにはありとあらゆる機械が存在すると言っても過言ではない。
 機械が『プログレス』を使えるようになるのだが……人型である必要は無いのだ。

 知性さえあるのならば、すべての者に等しく平等に与えられる。
 それこそが、『プログレス』に俺が求めた理想の力なのだ(『超越者』を除く)。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──とてもいい商談でした」

「ああ、この出会いに感謝しよう」

「ふふっ、良かったですね『機械皇』様!」

「……ああ」

 少々黒い笑みを浮かべていたはずなのに、隣でロロが無垢な笑みを浮かべただけで、浄化されてしまう『機械皇』。

 今回の交渉で俺は『プログレス』を提供、『機械皇』は一世代古い機械を提供した。
 俺はブラックボックス化している機械、対する『機械皇』も似たようなものだ。

 何世代もすでに進化しており、今では休人である地球人の知識もだいぶ得ている。
 発達した化学は魔法と変わりないというのだが……まさに『機械皇』の機械がそれだ。

 俺もまあ、その両方を合体させる案をいつも提示させてもらっているがな。
 そんなこんなで、『機械皇』にもおすそ分けすることに成功するのだった。


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