虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレス配布前篇 その06
お次に訪れるのは、『錬金王』たちのアトリエである。
転送陣から移動すると、使用履歴から気づいた住人が迎えに来てくれた。
「よく来たな、『生者』」
「ええ、『錬金王』さんもお久しぶりです」
「あっ、『生者』さん! あの、今回はどういったご用件でしょうか?」
「お二人にはお渡ししたい物がありまして。今回は、配達をしております。日頃お世話になった方々へ、私の発明品を説明を添えて贈るために」
そう言って、『錬金王』とユリルにその発明品──『プログレス』を渡す。
まだ外の情報を集めていなかったからか、二人はそれが何なのか分からないようだ。
「これは『プログレス』。『超越者』以外の知性を保有する存在すべてが使える、新たな力のシステムです」
「……ほぉ、面白いな。構造は…………むむむっ、どうなっている?」
「すでに『プログレス』は神々によって祝福され、解析ができないようになっています。いかに『錬金王』さんでも、これは破れないですよ」
「チッ、神の奴らか。また呪いを喰らうのは面倒だからな……諦めてやろう」
すでに一度、エリクサーの錬成によって呪いに侵されている『錬金王』。
今はユリルが彼女の権能を継承し、エリクサーを開発したので治ったわけだが……。
「『超越者』が使えぬ力の法則か。なるほどな、それはいい。自分で言うのもなんだが、権能があるだけで戦略の幅は大幅に増えるのだからな」
「えっと、つまり私は使えないんですね……残念です」
「申し訳ありません。ユリルさんには、後ほど代わりにプレゼントを贈りますので。それでもここを訪れたのは、一つお願いしたいことがありまして……」
「なるほどな──私がそれを使えるのかどうか、知りたかったわけだ」
現『錬金王』はユリルだ。
俺が呼ぶ『錬金王』とは先代であり、今の彼女を表すものではない……俺も彼女も気にしていないから、この呼び方なのだが。
今回気になったのは、そこだ。
彼女は唯一、俺が知っている『超越者』の権能を持っていた人物。
俺が禁止したのは『超越者』が起動に成功することであり、現在『超越者』としての権能を保有することで判別を行っている。
まあ、権能を停止する手段があるかもしれないが、[称号]のシステムを参考にしているため、権能を捨てないと起動はできない。
「そうですね、できれば良好。そうでなくても、そのデータが手に入ります。ちなみにこれ、移植と装備と二パターンありますがどちらにしますか?」
「ふっ、決まっている──移植だ!」
「し、師匠様!? 装備で、装備でお願いしますね!」
「は、離せユリル! 私は、なんとしてもこの実験を成功させねばならないのだ!」
なお、最終的に『錬金王』が折れて装備する方になった。
俺としても、両方のパターンが見たかったし……これで良かったんだよな。
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