虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレスの権能
プログレスが眷属神として降臨し、何が起きるでもなく……。
まあ、しいて言うのであれば、彼女の権能が俺も使えるらしいのだが。
「『プログレス』の性能強化、および起動時間の短縮か。権能にしては、あまり直接的な効果は無いみたいだよな」
《プログレスはまだ、生まれたばかりの身。今の状態では、眷属として貢献する権能もそう異常とはなりません》
「異常って……まあ、『生者』級の権能がゴロゴロ存在していたら、厄介極まりないとは常日頃思うけどな」
命のストック数を増やしたり、あらゆる行動への適性を極めたり、条件を満たせば即死させたり……権能と言われて思い浮かぶモノは、どれもこれもがチートすぎる。
その点、プログレスの権能はまだ常識的な範囲であろう。
性能強化も元の『プログレス』の性能を超えない範囲らしいし、心臓に優しい権能だ。
「にしても、眷属神ねぇ……それって、俺が主神扱いなんだが?」
《旦那様は神の領域に至っております。それは奥様と同じなのでは?》
「ルリはどのオンゲーでも神格化されていたからな。当然、みたいな感じがするが……俺は違うからな。だいたい、俺はいったい何の神様になるんだよ」
《今は神格が高くはなく、任命はされておりません。例えるならば、見習いとして格を高めている状態です……その状態で神が眷属として付いているのは、とてもレアですが》
神話から情報を集めてくれているらしい。
神を下して神へ至った者、神との賭けに勝利して至った者など……その例はかなり特殊らしいが。
「まあ、『プログレス』は使いどころも多いし便利なヤツはイベントで集めた。それで補えることもあるだろう」
《解析を終えた『プログレス』の情報は、随時端末に送信しております。アプリより確認できるように設定しましたので、時間がある時にでも見てください。アプリ上で、使用する『プログレス』の変更も可能です》
さっそく端末を取り出し、[プログレス]とまんまな名前のアプリを起動する。
前に使った『プログレス』の名前も載っているそれには、膨大な情報が書かれていた。
「能力、今後の進化予測、俺が使った場合のシミュレーション……お気に入りとかソート機能まであるのか」
知り合いのプログレスは自動的にお気に入り登録する設定にして、名前だけで面白そうな能力が無いか調べてみる。
「いろいろとあるんだな……そのうち、人の数だけ『プログレス』がある。なんて言葉が世に広がるかもな」
《『プログレス』の存在は、神々によってこの世界の人々にも広められております。善悪問わず、さまざまな者が使い……旦那様への信仰を捧げます》
「そんな気は無かったんだけどな……」
まあ、一度やってしまったからにはやり続けるつもりだ。
世界に混乱と混沌を生みだした、なんてことにならなきゃいいけど。
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